1001グラム。実は愛おしくも切ない重さなのである。
キログラム原器を題材とした映画。滅多に考える機会もないシロモノであるがゆえに、とても興味深い。題材に合わせてか、精緻に計算し尽くされた映像が愉しい。オープニングから心を掴まれた。ちょっととぼけた音楽。キログラム原器らしきものを作り出しているような映像と、ハイウェイや住宅地を真上から俯瞰する幾何学的な映像が交互に映し出され、クレジットがゆらゆらと現れる。
チョロQのような小さな青い電気自動車がたどり着いた先は、ノルウェー国立計量研究所。おそらく由緒正しき研究機関なのであろうが、建物の室内は、ブルーを基調としていて、無機質で、まるで近未来の病院のよう。SFっぽいのだ。
主人公の自宅も、その大きさにも瞠目するが、引っ越し直後のようにダンボールが数個置かれている他は、余分な物がなく、ここもまたブルーグレーの色合いで、無機質で、寒々しい。対照的に、パリの映像は、光が射し込み、温もりがある。パリのホテルの方が、よっぽど居心地が良さそうだ。
台詞が少ない。随所に、くすりと笑いたくなる可笑しみが散りばめられている。この感じは、「さよなら人類」を思い出す。色づかいや、味のある人物の表情を大写しで映すところは、アキ・カウリスマキ作品のよう(3本しか観てないですが・・・)。
台詞が少ないが故か、ひとつひとつの言葉が味わい深い。
「人生の質量はどれだけだ?」
「人生にはカオスが必要だ」
「人生の一番の重荷は、背負う物が何もないこと」
「魂の重さは・・・・」(えっ、そんなに軽いの?)
よくわからないけれど、なんとなく共感したくなる。人は誰でも最後は灰になる。人生の質量なんて考えずに、出来るだけ軽やかに生きていきたいと思うけれど、果たしてそれでいいのかと問われたような気がする。
この監督の映画は「クリスマスのその夜に」に続いて2作目。前作も大好きだったが、本作も好きだ。精緻な映像の中に、ほんのりと感じられる温もりが心地よく、幸せな気分に包まれた。