KnightsofOdessa

ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.5
[裏切りと疑心暗鬼の街角で] 70点

2013年ヴェネツィア映画祭コンペ部門選出作品。オレゴン四部作の最終作。と言いながら最新作『First Cow』もジョナサン・レイモンド脚本でオレゴンに戻ってきている。安直すぎる邦題の通り、本作品は環境テロリストのダム爆破計画を描いている。逮捕歴まであって適当なリーダーのハーモン、慎重すぎるジョシュ、紅一点でなぜか下に見られているディーナの三人を中心に展開する本作品は、これまでのロードムービー的な作品群から離れてノワール映画っぽくなっている。特に中盤から終盤にかけてジョシュがディーナの家の周りをウロウロするシーンでの光と影の作り方に現れている。焚き火のシーンに代表される『Old Joy』以降の系譜は黒に飲み込まれるかのような暗闇として突き抜けていき、前作のラストの窃視的なショットは本作品の中で幾度となく繰り返される。

どことなく違和感を覚えた原因は、彼らが携帯電話を持っているということだろうか。最終的にそれを捨て去ることで訪れる断絶はこれまでの時代よりも遥かに激しい断絶であるとは思うが、彼らは携帯電話を介して本来なら断絶しているべき人間と簡単に繋がれてしまうのだ。ラストで鏡越しにスマホを弄る人々を眺めているのは、『ウェンディ&ルーシー』で登場した二人を繋ぐマシンとしてではなく、本来失われるべき繋がりすら繋ぎ止めておけるマシンとして描いているような気がする。

本作品のハイライトは、ライトだけに上記の待ち伏せシーンとディーナの家に侵入するシーンだろうか。携帯電話ですら繋ぎ止められない人間が存在することの証明かのように、呆気なく千切れてしまった。
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