イルーナ

モアナと伝説の海のイルーナのレビュー・感想・評価

モアナと伝説の海(2016年製作の映画)
4.3
『ベイマックス』などと共に、予告詐欺として話題になったこの作品。
ポスターは一見ほのぼの系ですが、蓋を開けるとバリバリの海洋アドベンチャー巨編。
(そもそもポスターを見ても、どんな話かまったく分からないものとなっている)
「海のマッドマックス」と例えられているあたりから、どんな内容か想像ついた人も多いはず。
これがきっかけで大コケ映画の代名詞だった『ウォーターワールド』も再評価されたとか。
カカモラ、見た目はドーモ君チックで可愛らしいのにやってることは『マッドマックス』や『ウォーターワールド』そのまんま。
タマトアは歌といい、古きよきディズニーヴィランという感じでしたね。敵だけどマウイの心情や過去の事を一番知ってるタマトアが一番の理解者なのかも?
テ・カァはまんま巨神兵。ラスボスの描写がかなりガチなので、小さい子は泣いてしまうかも?
(溶岩の神ということでハワイ神話のペレを思い出したけど、正体を考えたらシシガミ様がモデル?)
海の上が舞台ということで、一歩間違うと風景が変わり映えしなくて退屈になるところを、これでもかと見せ場を用意して一瞬たりとも退屈させないのは流石としか。
また、本作の海はそのリアルな質感だけでなく意思を持って動くというファンタジー要素もあり、技術の進歩をひしひしと感じさせられた人も多いのでは。
その透明感といい美しさといい、リアルの海より海らしい……

しかしハワイ・ポリネシア文化をメインテーマにしたエンタメ作品って……かなり珍しくないですか?
同じディズニー作品だと『リロ&スティッチシリーズ』、他では『ポケモン サン・ムーン』くらいしかパッと思いつくものがない。
これでマウイの伝説を知った人も多いだろうし、バイキングよりはるか昔に広大な太平洋を渡った古代ポリネシア人の航海技術はオーパーツレベルだったことが知られるように。
タトゥー文化にも触れていて、マウイのタトゥーが動いて本音(良心)を表す演出が面白かった。
一般にあまり知られてない歴史や文化を周知するというのは、大変意義深いことだと思います。
(しかし神話でのマウイの最期があまりにもトンデモすぎる……類型の話は世界各地にあるとはいえ、内容が下の話題なので大っぴらに語られないし)

本作は制作にあたり、あらゆるジャンルから様々な専門家からのアドバイスをもとに5年の歳月をかけて作られたとのこと。
おばあちゃんが島の語り部という設定もそうだし、大切な人の死を経験してると涙が出てきます……
その後の『リメンバー・ミー』といい『あの夏のルカ』といい、ディズニー・ピクサー作品はおばあちゃんキャラが本当に心に残る。
心に普遍的なものを訴えかけ、受け継がれていく物語という題材に弱い私ですが、本作はその一つです。
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