回想シーンでご飯3杯いける

トイレのピエタの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

トイレのピエタ(2015年製作の映画)
3.8
手塚治虫が死の直前の日記に書いたアイデアをもとに映画化。数行の文章を原作として映画化しているので、中身は大幅に脚色が加えられている。遺族がこの映画をあまり気に入っていないらしく、やはり日本映画業界の原作ものに頼ってしまう風潮が気になってしまうのだが、、、映画としての出来は目を見張るものがある。

主演は、これが俳優デビュー作となるRADWIMPSの野田洋次郎。かつて画家を目指していた青年を演じており、イメージ的にはがっちりハマっているものの、無口なキャラ設定であるが故に辛うじてこなせた感じがしないでもなく、むしろ彼らを囲む脇役達に目が行く。

特に注目なのが、当時17歳だった杉咲花の躍動感。胃癌を宣告された主人公に「今から一緒に死のう」と強烈なひと言を発するインパクト。12歳年上になる野田を、役柄としても俳優としても大きくリードし、死の淵に立った彼に、生きる力を与えていく。その存在感は、ちょうど同じ年頃に「ジョゼと虎と魚たち」に出演し強烈なインパクトを残した池脇千鶴を彷彿とさせる。最近はテレビの人という印象が強い彼女だが、また本作のような映画にも出てほしいと切に思う。

他に、この1年後に杉咲の母親役として「湯を沸かすほどの熱い愛」で共演する事になる宮沢りえ、RADの大ファンであることから友情出演となった大竹しのぶ、そしてリリー・フランキー等、演技派が揃っている。