チョマサ

ナイトクローラーのチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ジェイク・ギレンホールが要の映画だったと思う。そして見事な演技で完璧に映画を支える大黒柱になっていた。
いいなと思ったのが表情の演技で、映画に出てくる他の人の顔と動きが明らかに異なっていて、それがルーの役によく合っていた。何が異なっているのか、うまく説明は出来ないけど、おそらく、いつも相手を威圧するような眼と、動揺が顔に現れないことと、表情のパターンが少ないから、周りの人間の顔と浮いているんだと思う。サイコのノーマン・ベイツに似た顔をするなぁと思った。サイコは全編見てないことに気づいた。

ルーのそれまでの生活が、彼の表情が周りの人間と異なる原因だと思う。彼は、自分が学歴がない人間なんだとニーナに話すシーンがあるのだけど、ネットで学んできたとも語っている。そして一日中パソコンの前に座っているともテレビを見ているとも言う。家での生活の場面を見ても観葉植物に水をやったり、笑っちゃうくらいベタだけど、他の人と関わりが少ない生活を送っている。ニーナやリックを見ると、周囲の人間が他の人間と交流するのに表情豊かに笑ったり、声の調子を変えて伝えようとしているのに、反対にルーはいつもおなじ話しかたと表情で、それが対比になってルーは浮いている。たぶん周りの人間がやるようなコミュニケーションをやってないから、独特のコミュニケーションになっている。

ルーが話すことも、普段の会話では使わないような表現ばかりだった。名言集とか理論とか啓発本に書いてあるような、偉そうで理に適ったようなことばかり言う。そういうルーについて行けずにリックは黙るようになったときもあった。ルーがこういった言葉を使うのも自分本位で、周りの人間を従わせるための手段なことは、一人で行動したがったり、薄給でリックをこき使うところ、ニーナとの交渉の場面を見るとよく分かる。リックとの面接場面で親しくなろうと思ってなのか、ルイス・ブルームという名前を略して ルー と呼びかけた時に、ルイスだ とすぐに訂正した場面もそう。冒頭でかっぱらった鉄くずを買ってくれる業者に、雇って貰おうと売り込む場面もそうだった。売り込み方が自分はこんなに良い人間だってアピールで偉そうに見える。リックの面接態度とはえらい違いだった。

台詞で自分の本心を語らせるのは陳腐だと思ってたんだけど、この映画だとそうは思わなかった。ルーの偉そうな態度と、言葉遣いが相手を従わせるやり方になっていて、ルーは何言ってんだとも思うのだけど、それが不自然に思えなかった。ひどいやり方なんだけどね。

映画は、テレビがみんなが信じる真相を作り上げていることを取り上げている。強盗事件にあった被害者と思われる家族が、麻薬の売人だったことを隠そうとする。それがバレたら、視聴率を取るために、今まで作ってきた家族像が崩れてしまう。ルーに至っては、勝手に事故現場の死体を動かしたり、映像を加工してヤバい部分は切る、ライバルのパパラッチの車をいじって事故を仕組んだりと、金と偉くなるためなら何でもする。虚偽の報道の原因が金なことを見せてるのだけど、もはやテレビは衝撃的な映像を見るための娯楽で、報道性はないんだなと思う。youtubeっぽい動画サイトでの視聴回数でも稼いでるのは知らなかった。

テレビの方がずっとリアルだというセリフがある。ニュース番組を撮るスタジオで、たぶんロサンゼルスの夜景を映したパネルを見てこのセリフを言う。カメラを通して見るとこの背景は本物に見えるのだけど、スタジオで間近に見るとボケて本物のように見えない。カメラ用に映りがよくなるように作られているんだろうけど、ルーの価値観がこのセリフに現れていると思った。自分がつくる衝撃的な映像の方が現実だという価値観。

ルーの、最後まで悪くて危ない人間ぶりを見るのが面白かった。悪すぎる。エンドロールでAPM MUSICってとこの曲がたくさんクレジットされてて、そんなに曲が掛かってたか思い出せなかった。たぶん、ニュース番組のOPの曲のことだろう。

日本語公式サイトでスタッフを見たら売れっ子のスタッフがたくさん関わってるんだな。関わってきた作品を見てそう思った。この映画はカーチェイスが時折挟まっていて、それも凄かった。
チョマサ

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