Yukenz

とうもろこしの島のYukenzのレビュー・感想・評価

とうもろこしの島(2014年製作の映画)
3.8
台詞がほとんどない分、登場人物の表情や仕草に集中できる。台詞がなくても話が分かるような設定なのはよい。

自然と共に生きる姿に何とも癒される。作業に疲れたら中洲に寝そべり空を眺める。先祖から受け継いだ栽培法を次の世代に伝えていく。

両親に先立たれた孫娘がちゃんと学校に行くように祖父が世話をする。孫娘の為なら多少しんどくても頑張れるような気がするが、いよいよ少女から女性に変わっていく中で、素性が分からない男たちからのちょっかいが新たな心配の種になってくる心情にも共感。

老父が両対岸の紛争に関わりたくないと強張って見えるのは、孫娘の両親の不在と関係しているからなのか。

それでも負傷した敵兵を目の当たりにしたら介抱してあげるのが人の務めとして信義に従い、そして兵士もその恩義に対し心を開いてゆく。出自や立場が違えど、ましてや言葉は通じなくても、お互いが歩み寄れば争いなど起こるものではないのだと改めて気付かされる。

ラストシーンでの老父の運命は残酷だがこれもひとつの自然の摂理か。
そして新しい世代が自然の法則に従い伝統を引き継いでゆく。
何とも悠長であるがこれが本来の人間の生き方なのかもしれない。

言葉は極端に少ないが色々と考えさせられる良作だった。
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