唯

Dearダニー 君へのうたの唯のレビュー・感想・評価

Dearダニー 君へのうた(2015年製作の映画)
3.8
「金持ちになることで君の音楽は堕落しない。堕落させるのは君自身だ。そのことについて君はどう思う?」ジョンレノンはやはり考えのレベルが天才的。

巨万の富があって人が群がって、そんな中で初心や信念や情熱を持ち続けることは容易ではない。
純粋な心から夢を追うし、幸せを手にするために家庭を設けるのに、段々と本来の目的や目標から逸脱してしまうのが人間というもので。
そうして、つまりは生活のために仕事を続けて行く中で、どんどん理想や幸福から遠ざかって行く。

自分に正直であることは、とんでもなく勇気を要する。
易きに流れて他者や社会が求めるニーズに合わせてしまうと、本来の自分、魂の自分を潰すことになってしまうのに。
誰もが自分が生きたい様に生きて、自分自身を貫けたら最高にハッピーで奇跡が続々誕生するかもしれないのに。

ダニーは、自分が幸せになることを許可できていないのだろうなあ。
それは、罪悪感や背徳感や後悔の念など、あらゆるものがそうさせるのだろうけれど。
年老いても素直になれないのは、見ていても辛いものがある。

「諦めないところが好き」「頑張る価値があるから」
ダニーは、基本的に人好きでお節介で寂しがり屋。
人が人を拒絶するのは、恨み辛みからではなく寂しさから。
それを埋めることが出来れば、誰とだってわかり合える。
もちろんそれには歩み寄る努力が必要だけど。

老いたロックスターのアルパチーノはダニーそのものだし、アネットベニングの大人の女性感が大好きだし、ジェニファーガーナーの良き妻感、ボビーカナヴェイルの生真面目さ、クリストファープラマーもイケオジで最高!
キャスティングがまた素晴らしいね。
唯