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本能寺ホテルのTSのレビュー・感想・評価

本能寺ホテル(2017年製作の映画)
2.6
【信長を踏み台にした自分探しの物語】60点
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監督:鈴木雅之
製作国:日本
ジャンル:歴史
収録時間:119分
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2017年劇場鑑賞4本目。
面白い設定なのに物足りない印象でした。結局のところ、リード文に書いた通り、悩める主人公を立ち直らせるために戦国時代、そして織田信長が登場しただけであり、どのあたりに力を入れているのか極めて不鮮明だと感じた映画でした。しかし、決して悪くはないはず。冒頭は周りの方も笑っていたし、終盤は少なくとも感動している方もいらしたと思うので。

勤務先が倒産してしまい、職を失ってしまった繭子は途方に暮れていたが、恭一にプロポーズをされる。その都合で京都にきてホテルを探すのだが。。

ロケーションが京都なので関西人からすると嬉しいです。故に寺のロケ地やその場所関係などは少し気になりましたがまあそこは仕方ない。舞台となる本能寺ですが、現在も若干場所が違えど京都市に存在しています。もちろん信長がいた本能寺は1582年に焼失していますが、秀吉の命により、1591年、現在の場所に移転されたそうです。ちなみに僕自身行ったことがありますが、四方が近代的な建物に囲まれているため風情も何もありませんでした。

さて、主人公繭子を演じる綾瀬はるかですが、今回はあまり頂けない。別に綾瀬はるかが悪いのではなく繭子のキャラがそうさせています。見ていて非常にイライラしてしまうのですよね。立場を弁えないあたりや、無知すぎる点など。百歩譲って、歴史を変えてしまうというタブーはエンターテイメント性があるので良いと思いますが、全体的に身勝手な主人公だなと感じてしまいました。
濱田岳は安定していますが、どうしても『信長協奏曲』の徳川家康役のイメージが抜けない。堤真一は織田信長に相応しいと感じることが出来ました。なので、キャスティングに関してはあまり文句はないです。

問題は、この「本能寺の変」という一大事件を主人公の人生の踏み台にしてしまったということです。別にそんなのを見たいために劇場に足を運んでいるのではないのです。あくまで「戦国時代にタイムスリップ」という興味がそそられるテーマに期待をして劇場に足を運んでいるわけですから、戦国時代が舞台なのは当たり前且つ物語の重要なテーマも戦国時代に置いてほしかったところです。現代と過去が行き来するのは物語の性質上仕方ないですが、現代の話がなんとつまらないことよ。しかも異様に長いシーンもあるのでテンポが悪い。このあたりが今作の欠点であると思いました。

また、現代の舞台でもある本能寺ホテルが、本能寺とほとんどゆかりのない場所というのが面白くない。そこの支配人も終始挙動不審なので、何か知ってるのかと思いきやそうでもない。曰く付きの建物、人物という設定の方がミステリアスで興味深かったと思うのですが。。

こんなに中途半端になるのならば、どうせなら繭子が信長に本能寺の変のことを伝えて、信長が明智に一矢報いるというカルト的展開になった方が楽しめたかもしれません。「本能寺の変」時の信長の遺体は見つかっていないのだから、多少ファンタジックに描いても面白いと思います。変えぬ歴史に祟りなし。というのでしょうか。遊び心で少しいじっても良かったと思います。変えて文句を言うのは一部の歴史学者くらいでしょう。

悲しいことに、最も良いと感じたのが壮大なBGMでした。戦国時代を彷彿させる素晴らしいBGMだったと思います。そんなわけで、一定の満足度は得れそうですが、どこかちぐはぐなところがあった作品でした。ただ、やはり歴史好きとしては信長を取り巻くシークエンスは見ていて気持ち良い。現代の話をなくせばもっと良くなったのでは?と個人的に思ったりもします。
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