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エクス・マキナのriyouのレビュー・感想・評価

エクス・マキナ(2015年製作の映画)
4.8
これは通常の意味でのチューリングテストではない。機械だと知っていて尚。という話だ。
ケイレブと一緒に僕たちも試される(試す)。映画装置のテストだ。映画は観客を究極的に没入させるイメージを作り出すことを目指してきた。その試みはもちろん技術と固く結びついている。CGはどんどん映画に取り入れられ、特殊メイクの精度も益々上がっている。
だがスターウォーズローグワンのレイアやアベンジャーズのハルクなどの作りものは「疑うな」という裏の命令とともに現れているように思う。そこで信じよう信じようとしてかえって違和感を持つ瞬間がある。それは没入を殺ぐ。
しかし今作では「疑え」と言われている。ミステリー的に疑うのもあるが、何より彼女に意識はあるのかといった風に疑う。僕たちは機械が剥き出しの彼女のボディの細かい動き、表情を注意深く見る。
機械だと宣言され、その上疑えと言われ、しかもこれは映画だ。こう書いてみると、こんなもの観客が協力しないで真面目に観られるものではないと思う。(協力とは信じるふりをしてやるということだ。)
しかし、僕は彼女に恋をした。彼女がケイレブに見せるために服を着る。好きな人にかわいいと思われたいんだという機微を読みとってしまった。表情や動作から微小表象の襞を開いたんだと喜んだ。ケイレブと同じように。作りものだと知ってて尚彼女の美しさ、かわいらしさに惹かれた。

AIが発展する時勢に合い、また女性の社会進出を文字通り表す、時代性の強い作品でもあった。

この作品は映像表現への挑戦であり、少なくとも僕に対してはその試みは成功している。
この映画がある表現においてAVA≒EVEとなってくれたら嬉しい。
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