三畳

白河夜船の三畳のレビュー・感想・評価

白河夜船(2015年製作の映画)
3.5
この恋をどうしたいって話じゃなくて、深い淋しさをただ描いてること、それが2人の間で共鳴するからやみつきになってるような感じ。

確かめてみると原作でも
【わかっていることは、この恋が淋しさに支えられているということだけだ。
この光るように孤独な闇の中に2人でひっそりいることの、じんとしびれるような心地から立ち上がれずにいるのだ。】

という一文があり、それに近いところまでは想起させてくれたと思うけど、不倫の切なさ、可哀想な自分たちを楽しんでるだけに見えてしまってイラついた(まだ帰らなくていいの?それ聞くの今日3回目。の言い方とかだろうなぁ)。

背徳を含んだ恋愛を見て、それを美しいと思うか汚いと思うかは完全にケースバイケースで、不倫と一括りにはしないようにしてて、
でもこの映画は序盤で不倫への嫌悪感が出てしまって、小説ではそんなこと感じなかったのに、この邦画の間の空気感も北欧みたいな壁紙も薄っぺらい衣服も、好きになりそうな感じなのに全てが裏目に際どい一線で気持ち悪い、何でだろうと思いながら観て…

途中(うなぎの話をするあたり)から原作の文庫本出してきて読みながら膝の上にスマホを置いて観た。
文章表現が素晴らしくてしみじみと心に透き通った。

解説という意味でも原作ありきで、映像だけじゃとうてい伝わりにくいんじゃないかな。

早朝の公園のシーン、湿度とか仄暗さとか既視感あってとても良かった。女の子が画面内に現れるのすごく不自然で、普通の映画なら素人かと思ってしまうけどこの違和感こそ吉本ばななのスピリチュアルゾーンに入る時の独特の感じを出したかったのかな。

全編通して重めの髪に化粧っ気のない顔をキレイだなとは全く思わなかった(作者に寄せてるのか?)んだけど、ラストの花火を見つめる顔だけは本当にキレイだった!
演出としてあれ、こんなキレイな人だったっけ?と思わせるためにそれまでを野暮ったく写してたのかな?
三畳

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