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ブラックパンサーのHrtのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
4.1
2018年3月1日、どの映画館の何番の劇場で観たかまで覚えている。
それくらい自分の目には鮮烈に映る作品だった。

『ブラックパンサー』が何を描いていたか。
初の黒人の正統派ヒーロー。
黒人の王。
もしアフリカの国が欧米諸国の植民地化に置かれていなかったら(ヴィブラニウムはダイヤモンドや金などの採掘資源の比喩とも取れる)。
黒人間でのイデオロギーの衝突。
王族として生まれ恵まれたティ・チャラが直面する王政の難しさも含まれていただろう。

かつてブラックパンサー党が発足したアメリカはカリフォルニア州オークランド。
その街の出身であるライアン・クーグラーが監督を務めることは必然だったとも言える。

ほぼ黒人キャストで撮られたことでも歴史的な作品となるだろう。
スーパーヒーロー、ブラックパンサーとしての活躍が本作では存分に楽しめるが、自分が一番に感動したところは最後の最後、Kendrick Lamar feat. SZAの"All The Stars"がかかり終わった直後のシーンだ。
そこではティ・チャラが王としてワカンダの開国を決断し、国連でスピーチをする。
これはワカンダの資源や技術の輸出や人の流入出を意味するだろう。
ワカンダと地続きの国の移民も当然増えるはずだ。
「危機に瀕した時、賢者は橋を架け、愚者は壁を作る。」
トランプ政権下のアメリカでこの言葉は一体どれほどの強度で響いたのだろうか。
現実世界とMCUとが混淆し、シリーズの可能性の広がりをダイレクトに感じた。
『アイアンマン』以降10年間の作品群を経てさらに膨張しつづける世界に感動してしまった。

有色人種でもスーパーヒーローをやれる。
『ブラックパンサー』、チャドウィック・ボーズマンが成し得たことはとても大きい。
その偉業に最大限の敬意を示したい。
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