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SaltburnのHrtのレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
4.1
圧倒的に人を惹きつける佇まいをしているジェイコブ・エロルディ演じるフィリックスについてバリー・コーガン演じるオリヴァーがモノローグするオープニング。この時点で煌びやかな私生活を謳歌するフィリックスへの愛憎の物語という推測を立てつつ鑑賞したが、大体合ってたものの結末は想像をはるかに超えていくもので面食らってしまった。物語も演出もキレがありすぎる。オックスフォードでの学生生活の時点では感じなかったやばさはフィリックスの実家「ソルトバーン」へ舞台を移してから劇的に増加する。フィリックスへ向ける眼差しもそうだが彼の母親や姉をも取り込もうとするオリヴァーの危険性に気づくのはそのずっと後だった。総じて「愛憎」という言葉で表現するには複雑でありそこには英国階級社会の背景も手伝っているとは思うものの、オリヴァーという人物自体がかなり特異に演出されているおかげで一層毒々しく見える。最初はフィリックスが物語の中心にいるように見えるがそれはオリヴァーによる視点の誘導だった。それを誇示するようにSophie Ellis-Bextor「Murder On The Dancefloor」がかかりオリヴァーが踊り出すラストシーンには痺れた。映画作家としてのエメラルド・フェネルは『プロミシング・ヤング・ウーマン』とこの『Saltburn』だけですでに作家性が完成されているのがすごいと思った。単なる印象でなくかなりはっきりした感覚に近い。
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