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愛なのにのHrtのレビュー・感想・評価

愛なのに(2021年製作の映画)
3.9
今泉力哉脚本独特の間合いと気まずさがよく演出されている、かつ城定作品の淫靡さも際立つ脚本で両者のバランスがとてもよく表現されていた。
河合優実演じる岬の残酷なまでの一途さは周りを巻き込み、それによって多田の心情変化が描かれていくのが奇妙奇怪かつ触法スレスレながらも微笑ましく思ってしまった。
一方の一花の方もかなり残酷で、それは一花というよりも人間の本能的なところを感じる。浮気していた婚約相手のザマァ加減も良かった。男という生き物のしょうもなさを表現するあたりそれなりに大人としての生活を乗りこなしているつもりでいた中島歩の役はかなり良かったと思う。
とするとこの物語は子供の方に肩入れしている印象も受けた。自分と結婚したいと申し入れる岬に多田も少なからず下心を持っていたはずで、でなければあの文通は成立しない。そういう自立したように見せかけた大人でも一息で崩れ去ってしまうという。
岬の思春期の気の迷いとの結論も出せる本作だがそれを多田から肯定してあげるところは「受容」という意味で今泉脚本の優しい部分だと思う。
さとうほなみ、向里祐香ともに素晴らしかった。同じ男に抱かれていることを隠して結婚式の計画を立てるシーンなんかも今泉力哉的な描写だなと。
多田の野暮ったい倫理観を表現する瀬戸康史の演技力の高さも再確認できる作品だった。
面白かったしこの映画を製作するにあたる企画としての勝利だと思う。
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