kiguma

スポットライト 世紀のスクープのkigumaのレビュー・感想・評価

5.0
[信仰と統治]


"教会は所詮ひとが作ったもの。ひとが作ったものはいつかかならず滅びる。だが信仰そのものは普遍で永遠だ。わたしはそれを区別しようともがいているのだ"

劇中、教会を担当する心理学者?が電話で語るこの台詞。短いこの台詞は深く心に刺さった。そして本作のテーマはすべてこのセリフに集約される。

演出、カメラワーク、音楽に頼らないハードコアな映画。クレジットをみると撮影監督は日本の方のようだけど、70年代のニューシネマ風の淡々としたカメラワークは今見ると新鮮。レッドフォードの映画に近い。

この台詞と自動への性的虐待を行った神父の、ある意味イノセントな告白が、ゾッとすると同時に無常を感じる。

僕をはじめ世界中の多くのひとが禅に惹きつけられるのは、ひとや組織と切り離された純粋で実用的な教えだからかもしれない。

ひとを殺せと命じる宗教などない。ただひとが殺せと命じるのだ。

教会でも学校でも政治でも、自らの善性を自認するシステムはより腐敗と崩壊が早い。

そして「地域の同質圧力」は日本だけの特色だと思っていたけど、アメリカの、そしてボストンのような大きな都市でも発生する。そこに国籍や民族性は関係ない。
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