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スポットライト 世紀のスクープの3104のレビュー・感想・評価

3.8
にわかには信じがたい本当の話。

カトリック教会の神父による幼児虐待事件も、それを組織ぐるみで巧妙に隠していたことやその手段も信じがたいが、何よりキリスト教圏全体を揺るがしかねないこのスキャンダルが、(規模は大きいとはいえ)ボストンというアメリカの一都市の新聞紙の一記事をきっかけに明るみになり、やがてはカトリックの体制にも影響を及ぼしたという“事実”が信じがたい。

しかし事実は小説よりも奇なり。これは事実を元にした映画である。

事実に題材を採った多くの作品がそうであるように、この映画も終始地に足の着いた筆致で描かれる。ひとえにそれが映画全体が説得力を持ち得る要因になると同時に、どうしても「地味」な印象を与えてしまう。そう、地味だ。妨害勢力による襲撃シーンや手がかりを追ってのチェイスシーンなど、飽きさせぬため挿入される場面などは皆無である。ただ地味で重心低く進むが故に(史実通りに進むと知りながらも)、物語の末がどうなるかをまっすぐに見据えることができるともいうもの。※手触りとしてはウォーターゲート事件を追った映画「大統領の陰謀」(76)を思い出す。

キリスト教という概念が横たわる海外の(ほとんどの)作品ではどうしても宗教観やそれに関する知識が必要とされるが、そこは言っても詮無きこと。しかし魂の根底にある宗教への「根源的帰依」をいわば人質に取られるような形で神父達に“侵害”された被害者達の心の内にこちらの理解がほぼ追いつけないのは、観客としての明確な「手落ち」といっても大袈裟ではない(エンディングに列挙される、幼児虐待事件があった国・地域の数の多さに圧倒される)。

事件の記事が掲載された日曜の朝。「スポットライト」チームの面々の様子が出社してくる時の、静かな緊張感を湛えた描写が良い。そしてレイチェル・マクアダムスが今作でもしっかりと可愛い。
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