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ヘイル、シーザー!の3104のレビュー・感想・評価

ヘイル、シーザー!(2016年製作の映画)
3.8
50年代のハリウッド。テレビに押されながらもまだまだ沢山の「夢」を創り出していた場所。そんなハリウッドで新作映画の撮影中に主演スターが誘拐された。誘拐の目的は?スターの行方は?“スタジオの何でも屋”ことマニックスが事件を追う・・
というミステリー仕立てというよりは、誘拐事件を追う途上で起こる様々な出来事、騒動を描いた群像劇のようなテイストが物語の大半を占める。
当時の実際の作品、俳優、システムなどにモデルをとった、コーエン兄弟流の(古き良き)ハリウッド賛歌。

宣伝ではともすれば誘拐されるスター、ベアード・ウィットロックを演じたジョージ・クルーニーがメインのような扱いだが、実際の主役は何でも屋マニックス役のジョシュ・ブローリン。
ジョージやスカヨハなどが引き起こす騒動に振り回され、自分の身の振り方を案じながら奔走する姿がある意味いじらしい。

基本的にいつもの「シリアスじゃないばかばかしい方のコーエン兄弟作品」で特に深く考えずとも楽しめるが、当時のハリウッド事情や作品および俳優の知識がないとわからない部分が多い(作り手側はそれを特に“わからせよう”とはしていない)。
スカヨハはエスター・ウィリアムズ、チャニング・テイタムはジーン・ケリー(彼が演じるミュージカル映画のシーンは純粋に素敵!)、ジョージ・クルーニーはヴィクター・マチュア?・・などなど、モデルであろう人物がわかるとなお面白い。役者だけでなくティルダ・スウィントンが2役で演じる姉妹の記者も実在の人物らしい。
そして誘拐に関わる人物達のモデルは「ハリウッド・テン」。彼らの思想(の現実性の伴わなさ)や行動の描写からは、コーエン兄弟のシニカルで批判的な視点が存分に窺えるというもの。

こうした能書きや知識に頼らずとも、豪華な出演陣の顔触れを眺めるだけでも十分に楽しめる作品だといえる。しかし個々の役者やエピソードの立体的な絡みがあまりないのが少し物足りないが。
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