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WEEKEND ウィークエンドのSPNminacoのレビュー・感想・評価

WEEKEND ウィークエンド(2011年製作の映画)
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親しい友人のホームパーティから、クラブで出会った他人と過ごす週末へ。友人に囲まれた場所では少々よそゆきの顔、2人きりの家では濃密な時間。日頃ゲイはオープンにセックスを話さないし誰も聞きたがらない(職場では男たちが聞くに耐えない猥談をするのに)…だからこそ、言葉にしていく。ほぼ静かな会話劇は気恥ずかしいピロートークから誰にも言えない本音、ゲイとしての人生観へと深まって、カメラは2人の男のプライベートな扉を開け、その内にそっと入り込んでいく。知らない相手との関係は理想の自分を投影するカンバス、というのは実に的を射てて、お互いはそこに新しく描かれる自分を見つける。
形式的には『ビフォア・サンセット』みたいにとてもロマンティックな、2日間限定の運命の恋だ。でも普遍的なラブストーリーに落とし込んだりしない。そこが誠実。繊細で赤裸々な2人の会話はゲイ・カップルにしか成り立たないし、2人乗り自転車も、定番の「旅立つ恋人を追いかける」クリシェもゲイにとっては意味が違う。ベッドでの「カミングアウト」は最もロマンティックで優しい場面だった(これは惚れるだろ…)。最後にヘテロな親友がまたグッとくるよ。
穏やかな微笑みに消化不良を抱えたラッセルと心の傷を隠して強気に振る舞うアーティスト志望のグレン、真っ直ぐ見つめ合う視線が切なくも温かい。深夜14階の窓にぽつんと灯った明かりは、夜明けにいくつもの窓からコンクリートの建物を暖めるかのように灯されている。
脚本と演技がきめ細かく丁寧で、一瞬一瞬の反応に嘘っぽさがない。『さざなみ』『荒野にて』とは違った監督アンドリュー・ヘイの地に足着いた真摯で優しい眼差し、親密な温もり。ゲイ・ムービーの傑作じゃないかな。
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