こたつむり

エル・トポのこたつむりのレビュー・感想・評価

エル・トポ(1970年製作の映画)
2.0
魂をくり抜く作業。
それは見世物としてのオナニズム。

物語を作るということは翻訳作業と同じ。
自分の中にある情念や経験や妄想や衝動などを形にする作業…だと定義付けるのは、いささか乱暴ですが“近からずとも遠からず”だと思います。

だから、前提条件として。
読者や観客は“在るもの”として作り上げる…のが一般的じゃないでしょうか。作品は作者から投げ付けられる一方的なものではなく“他者”に受け止められて完成するもの。“他者”の存在を意識しない作品は「幼児のお絵かきと同じ」と言っても間違いではないのです。

しかし、“他者”を意識するあまりに。
それが物理的、精神的な枷として“純然たる表現”を妨げることもあります。まあ、その辺りのさじ加減は古来より喧々諤々と議論を繰り返しても答えは出ていませんからね。人それぞれ…が最も正解に近いのでしょう。

そして、本作は。
ホドロフスキー監督が“他者”に迎合せずに描いた物語。それは純粋で極彩色のエネルギーであり、魂を焼き尽くすほどの膨大な熱量。とても爆発力が高い作品に仕上がっていました。

いやぁ。この熱量こそ“若さ”ですよね。
…なんて思ったら、これを作り上げたのは監督さんが40歳の頃。いやはや。何とも驚きです。10代や20代ならば尖がっていても解るのですが…。“守り”を意識する年頃において、積極果敢に“攻め”の姿勢で創作したことに感服する次第です。

まあ、そんなわけで。
監督さんが“他者”を意識したかどうか…は不明ですが、少なくとも“他者”に迎合していない作品であることは明白。だから、観客側も無理に合わせる必要はなく。単純に“好きか嫌いか”で受け止めれば良いのだと思います。

ちなみに僕は。
次作『ホーリー・マウンテン』のほうが好きです。本作のモチーフである“西部劇”よりも“神秘主義”のほうに興味がありますし、金銭的な余裕と技術の向上などで、本作よりも分かりやすい作品になっていましたからね。

勿論、一番好きなのは『リアリティのダンス』です。本作のように突き抜けた部分は少ないですが、“個の主張”と“他者への配慮”のバランスが素晴らしい作品だと思いました。
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