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日本のいちばん長い日のkunicoのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)
3.5
今年の原田監督は難しい!
私のような若輩者は、まず言葉を理解するところから始まります。
「駆け込み女と駆け出し男」同様、人生の先輩たちにギッシリ囲まれながら観てきました。

昭和天皇を演じたもっくんがとても上品でした。
一歩間違えたら笑えてしまうような口調なんかを自然に演じていて、上品以外形容できる言葉が見つからないほど。

陸軍の若い将校たちの戦争を続けたいという気持ちも何だか分かる気がする。
戦争をしたい、というよりも、決定的な武力での負けを認めていないのに何故白旗を振らねばならないのか、まだ自分たちには戦う力が残っているのに何故半端なところで諦めなければならないのか、それを良しとしないし、周りからも良しとされないだろうと思い込んでいたのだと思う。軍人としてのプライドや美徳もそこにあったはずではないか。
戦場にいる数百人の為を思ったらどうのこうの、なんてセリフがチラッとあったけど、実際戦場にいた兵士たちはどんな気持ちでいたのだろう。
日本にいてそこまで命の危険に晒されていない彼らと同じ感情であったといえるのか。

最終的にクーデターって、そんなことありますか。
あそこであの反乱が起こっていたら今の日本ってどうなってたんだろう。
命を粗末に出来ない時代に、味方同士で起こる命の奪い合いって本末転倒というか、もうどこに向かいたいのかも私には理解できない。

若さと情熱って、間違った方向に行くと凄く危険なもの。それって普遍的なことだなあ、と感じました。

一番記憶に残っているのは昭和天皇の言葉。
ナポレオンの話をしていて、人民のための終戦よりも自分たちの名誉のための戦争継続を優先させてはならない、といったことを仰せられる。
それが全てだと思いました。
もうそのセリフが全て。
お前ら全員よく聞け!とスクリーンに向かって声を上げたくなった。笑

ストーリーとはちょっと離れますが、原田監督って本当に面白い方だなと。
大臣と大臣が口論する姿がリバースショットで映されるんですが、そこにちょこちょこっとダルそうにタバコを吸う総理、山口努が挟まれるんです。その対比が面白いし、好きなテンポですね。
あと、スローモーション。これは前作でも印象的な使われ方をしていて「好きなスローモーショントップ10」にも食い込んでくる美しいものだったんですけど、今作では陸軍大臣が部下に囲まれながら議会に向かうシーンであったと思います。あの重々しい空気感が好きだと感じました。
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