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ザ・ダンサーのkunicoのレビュー・感想・評価

ザ・ダンサー(2016年製作の映画)
3.2
モダンダンスの生みの親、ロイ・フラー。
少し調べてみるとかなり彼女本人の生涯を脚色してるらしく、残念なことにギャスパー演じるルイは架空の人物らしい。
ということで、まるっきりの創作物としてこの映画を観た時に面白かったかどうかと言われると、至極平均的だと思う。

信念が強く軸のブレない表現者、かつパイオニアが見舞われる苦悩は、凡人には計り知れない。
その挑戦を支持する者、に巡り会えない限り芸術は芸術とすら世間に認めてもらえない。
劇中ロイには精神的に支えてくれるガブリエルと資金的に支えてくれるルイが登場するが、彼女を奥底から揺り動かしたのは同じくアメリカから渡ってきたイサドラ。
ロイはイサドラに対して彼女の才能を認めるに止まらず、羨望のその先の感情まで抱き始める。
イサドラの前にロイが跪いたあの瞬間、2人の関係が逆転したことが決定付けられたし、ルイが持て余していた絶望の引き金も引かれた。

些か理解できないのはこの点で、わざわざ実在しない人物をも作り出してロイの色恋沙汰を扱ったのは何故...?
ベル・エポックに舞い降りたジェンダーをも凌駕するダンサー、ロイ・フラーの伝記をそのままなぞるもよし、せめて彼女の探究した芸術を最後まで描き切ってほしかった。
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