映画はじめは本国公開時から楽しみにしていたこちら。
極限状態で表出するのは人間の底の部分で、生存本能と共に、特に「正義」における価値観が「あなたはどんな人間で在りたいですか?」と問いかけてくる。
私は現状こういった人間である、という告白でも無く、こういった人間であるべきだ、という善悪の判断を仰ぐものでも無く、「どういう人間で在りたいですか?」というクエスチョン。
人間の底、というか本質なのかもしれない。どうしようも無い人間の性は、直視することで気が滅入ることもあれば寧ろ安心することさえある。
その弱さ、醜さは生まれも待った本質ですよ、と。
その上でどう生きますか?ということ。
そこで試されてるような気がした。
「狂気が目覚める」とキャッチコピーにあるが、その狂気は決して他人事ではなく、誰もの日常の延長線上にあるものだ。
てっきりイ・ビョンホンを猟奇的な殺人鬼だと思い込んで見始めてしまったが、まるでそんなことはなく、「狂気」と騒ぎ立てるにはあまりに身近すぎる現象が淡々と、時にユーモアを交えて描かれる。
そこで人々が選び取る「正義」は正に千差万別で、どの視点から見ても本当の悪など存在しない。
誰かを糾弾するような物語ではなく、あくまで登場人物の置かれた状況を追体験することで観る者に問いかけてくるような映画だ。
「こんな世界線も存在する」というラストが希望に満ちていてとても良かった。
それまで人間の浅はかさというものをまざまざと目の当たりにしていたので絶望的な気持ちでいたが、ラスト特にあの地区に集まる人々は信仰心が人より強いのだろうが、「お手本」が救いに感じた。
ステンドグラスのシーンは本当に綺麗で壮絶なディザスター描写を超えてスクリーンで見る価値があると思う。
映画の作りとしてはパニックムービーというか「ウーマントーキング」の様な静の物語なので少しだけ間延びした、2時間で纏められた気も。