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哀れなるものたちのkunicoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
遂に観た。ランティモスが今回やってのけたのは、フェミニズムの啓蒙でも時代に警鐘を鳴らすでも何でもない。
男とか女とかは置いといて、動物としての本能や当たり前な欲求を全肯定してくれる話だと思った。
好きなだけ食べたいし、飽きるまでヤリたいし、出来るだけ長く生き延びたい。
固定観念に問いかける好奇心や学びに対する向上心、まだ見ぬものへの冒険心。
全て恥じるべき欲では無いし、その欲に翻弄される滑稽さをも描いていて爽快感すらあった。

ベラの純粋さは「欲求そのもの」であり、それに振り回される男たちの姿は「哀れなるもの」だ。
父親から歪んだ愛を受けて大人になったゴッドが、ベラを愛したいという欲を持ってしまうこともまた哀れ。
女だ男だを言いたい訳でも無ければ、この物語において糾弾の対象になる者は居ないのではとも思う。ジェンダーの話に置き換えること自体がナンセンスな気もするし。
説教臭くなく、とてもフラットな感覚で剥き出しの本能を愛でる映画であることに凄く好感が持てた。
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