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ひそひそ星の3104のレビュー・感想・評価

ひそひそ星(2015年製作の映画)
3.5
アナーキーな肌合いのもの、問題提起的なもの、エログロに寄ったもの、エンタメに振ったもの、そしてここ1、2年の間に相次いで公開された原作モノ・・。
様々な作品をハイペースで発表している“売れっ子”園子温が、自ら立ち上げたプロダクションで制作した新作。
近年の諸作とは異なる、極めて内省的でプライベートなタッチの作品。

構想は25年以上前からあったといい、監督は「本当はこの作品で商業映画デビューしようと考えていた」という。SFということもあるが、なるほど時代性を感じさせない“寓話調”な空気が全編に漂う。

リリカルでセンチメンタル、溢れる詩情。
設定や科白、美術などからつとめて周到に、そして必死に「SF」(この場合はサイエンス・フィクションよりもセンス・オブ・ワンダーの意味合いが強い)であろうとする姿勢が窺える。しかし静謐に神秘的にあろうとしても、どうしても“園子温臭”が拭いきれない。それは送り手側と受け手側(つまり僕)のSF観の相違に起因する部分もあるが、結局は園子温の“作家性”を観る側がどう受け止めているかという事なのであろう。そういう意味でも極めてプライベート色の強い作品だと思う。

題材の換骨奪胎気味な扱い方や“被災地”福島の作品への採り入れ方など、近年のいくつかの作品で垣間見える露悪的な部分とそれに付随する“臭い”を、僕はあまり好意的に解釈することができない(ときに『地獄でなぜ悪い』のような存分に楽しめる快作もあるが)。過去作と切り離して観るべきなのだが、どうしても色眼鏡的に“継続概念”のような観点で論じてしまいがちだ。

悪口のようになってしまったが、逆説的にそれだけ作家性が言及されるほど、彼が昨今の日本映画界で際立った特異な存在であるということでもあろう(フォローになっておらず)。
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