私は実際にあった事件を再現ドラマ風にして取り上げるTV番組が堪らなく好きだ。
報道とはまた違った民放のえげつなさが感じられ堪らなく好きなのだ。
TVの公開捜査番組は放送がある度に必ず見てしまう。
今作にも公開捜査番組が出てくるが今作の犯人山神一也の写真と事件のあらましをアナウンサーが話している時に市橋達也がよぎった。
2007年英国人女性を殺害し何度も捕まりかけながら自分の唇をハサミで切り落とした事もありその後整形をし逃げ延びていた市橋達也。
事件が取りざたされる度に今作に出ている俳優が似てるな〜と思っていたら誰とは言いませんが今作で犯人なのかもと疑惑を持って登場したのでちょっと笑ってしまった。
やっぱりってね。笑
3人の顔を合成してモンタージュ写真作ったのかな。
想像が膨らむ〜！ヽ(´▽｀)/
各都市で疑惑を持たれる3人の男達。
役者3人を並べても取り立てて似ているとは思わないがそこは人間心理を突いてくると似て見えるから不思議だ。
人間は悲しい事に人を信じるより信用できない生き物だ。
かく言う私もその一人かもしれない。
長く人間をやっていると人間不信になる出来事に必ず遭遇して段々と心を開かなくなる。
開く相手が特定されるといった方が間違いないだろうか。
一旦疑問の芽が膨らんでいくとそれしか見えなくなる。
今作は人を信用しない事が悪いと言っているのではなく人間心理に焦点を当てていて疑惑を持つ事の恐ろしさを描いている。
↓ここからネタバレかも？
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↓注意！
今作の犯人山神一也もそうだったのだろう。
同じ仕事を続けると人間同士の繋がりが面倒臭くそこから逃げて日雇いの仕事をしている事もそうだし人との関係性を保てないまま30歳を過ぎ事件の日派遣会社の担当に意地悪され心が怒りで一杯になっているところに被害者から優しくされて衝動的に凶行に走ってしまったのかもしれない。
知らない土地でいわば迷子になってしまいバス停に戻る事も出来ない。
暑過ぎて正常な判断が出来ない。
案外未解決の事件は被害者を狙って起きているのではなくそこがたまたま目に入ったからたまたまそこにいたからと言う様な単純な動機なのかもしれない。
家へ上がる所の描写はないのでどのタイミングで凶行に及んだのかは定かではなく観ている者の想像に委ねられているが優しくされたり相手が自分より優位に立つ事に我慢ならなかったのだろう。
生い立ちも想像してしまう。
そんな犯人と疑われた3人の男達のそれぞれを描いている。
ドラマにそれぞれ厚みがありどれも唸ってしまう。
どれが凄いのではなくどれも凄い物語だ。
それぞれ社会の闇の部分を描いていてそれを背景に事件と絡めている。
しかしラストの山神と一緒に働いた事がある男の告白が凄い。
山神は恐らく心を開ける友達もいなくこの男を信用していた訳ではないだろうが誰かに話したくて仕方がなかったのだと思う。
秘密は秘密にしなければならない気持ちとは裏腹に誰かに話したくて話したくて我慢出来なくなるそう言う心理。
引き込まれた。
最後にやられた。
一度疑いを持ったなら最後まで相手を信用出来なくなる人間の愚かさ。
信用しなければならなかった人を信用できなかった自分の愚かさ。
幾度となく湧き上がる後悔。
妻夫木聡の凄い演技に魅せられてしまいラストの涙に共感した。
もしかして人生のパートナーになるかもしれない相手と出会ったのに。
悔やんでも悔やみきれない。
素晴らしい演技だった。
まだレビューできていないが「ミュージアム」「悪人」で魅せた彼の演技もそうだが若い頃その可愛い顔だけの若い俳優からの脱却が窺い知れて彼の演技の幅を思い知った。
本当にいつの間にか凄い俳優になっていて出る作品ごとに唸らされる。
宮崎あおいもやっぱり凄い。
彼女しかこの役は出来ないのではないか？
どんな経緯で家出をして東京で風俗店で働く事になったのかは描かれてはいないもののある場面で彼女が「どんなに泣いても逃げられない」と話をする顔にゾクッとした。
いつもニコニコして年より幼そうな年齢不詳の可愛らしい笑顔の下に隠している女の顔が恐ろしく悲しい。
彼女の絶叫を伴った泣くシーンに涙が溢れた。
彼女も彼を信用しきれなかった。
安堵と共に激しい後悔が胸に込み上げて来たのだろう。
それを言ったら広瀬すずちゃんの体を張った演技も勿論泣いたし凄かった。
彼女の出演作は好んで観てこなかったので（ごめんなさい。(´･ω･`)）可愛い若い女優さんとしか認知していなかった事を謝りたい。
こんな役よく引き受けたな。
観ていて辛かった。
2回目の鑑賞時はここは飛ばした。
もう２度と観たくない。
すずちゃん、役だったけど怖かっただろうな。
女性なら誰でもこんな役はやりたくないと思うから。
今後の女優としての彼女の成長を知りたいと思った。
また凄いものを観た…
最近自分が頻繁に使い古しているこの言葉が鑑賞後一番に浮かんでしばらく余韻に浸りぼーっとしていた。
結局仕事に行く前と家族が寝静まった夜の2回に分けて鑑賞した事になるが私的には自分の許す時間の限り引き込まれ一気見した感がある。
渡辺謙、宮崎あおい、妻夫木聡の疑惑と不安に駆られた演技に引き込まれラストに胸打たれた。
勿論森山未來も綾野剛も素晴らしかった！
音楽がいい！
坂本龍一が今回も素晴らしい音楽を提供してくれました。
ラストの衝撃！
あいつが山神だったのか！
