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シン・ゴジラのyunumataのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
3.0
初・庵野秀明作品だった。とても期待して観に行ったけれど! 出てきたのは延々と「踊る大捜査線」(のレベルが高いやつ)、そしてテレビゲームのようなドンパチ。初代ゴジラで僕がとても好きだったところって、戦後すぐのあの浮かれた時代に現れた、文明すらも残忍になぎ倒す畏怖にあふれた姿と、命を落としていく名も無き人々の壮絶なドラマだった。男の子のホビー映画としてはとても良く出来ているし、コーフンしちゃう場所もたくさんある。けれど結果的にそちら方面へ鋭くさせ過ぎていて、ゴジラ映画としての大切な一要素がずっぽりと抜け落ちてしまっていた。「この国はスクラップ・アンド・ビルドで育ってきた」というセリフは、たぶん歴史や現象としてはその通りなんだろうけれど、その下にある名も無き人々の犠牲には目を向けない、ぞっとするくらいに病的な虚構を象徴するフレーズだったと思う(そういう意味で、びっくりするほど311後の日本人の楽しまれ方だ)。初代ゴジラとはその点でまったく真逆の作品だと思うし、一方面においてはそうかもしれないけれど、よく読む「完璧なゴジラ映画」「ゴジラ映画の決定版」といったような評は、やっぱりちょっとあてはまらないような気がしました。
ギャレス・エドワーズのゴジラは、人知を越えた自然に対する畏怖、そして庶民の目線がしっかりと描かれていた(あとはショボいんだけど……)。ギャレゴジにまるで足りなかったものがこの映画には確かに詰まっていて、逆にこの映画にはないものがハリウッド版のゴジラにはあるのかも。本当は、これってふたつでひとつなんじゃないかな。見終えた後にぞっとする、あの日常に侵略してくる感じ……市民の犠牲も自衛隊の犠牲も痛みをもって描かれない、ユートピアみたいな映画だな、と思いました。そういうホビー映画として存在していても、別にいいんだけれど……でもこれは、あの偉大な初代が描いていた、「ゴジラ映画」の最新作としては、不完全だと思う。

劇場(2016.08)
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