三谷幸喜が嫉妬しそうな極上コメディ。「自主制作」感を逆手にとったインディっぷりを「底辺で踏みとどまっている人々」に投影させ、そんな（とても丁寧に描かれる）愛おしい彼らの生活や想いが混ざり合いながら、スカッとするようなラストへとノンストップでカメラは進行してゆく。世間で言われているようなアイデア勝負・どんでん返し重視の作風ではまったくなく、緻密に組み立てられた脚本、役者の個性やハーモニーを引き出した演出、そして制作者の「まなざし」がやさしい、非常に完成度の高い作品。具体例を挙げれば『ラヂオの時間』とか、『サマー・タイムマシン・ブルース』が好きな人はきっと気に入ると思う。ああいう演劇チックな文系文脈と、ゾンビ映画の融合がこの映画の新しさなんだろうな。そういう意味ではＢ級ゾンビ映画に自分のバックボーンがないので、さらに熱狂してこの映画を楽しめる人はきっといると思う。素晴らしかったです、上田さん。
