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未来のミライのyunumataのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
3.5
やっぱり僕は細田守が好きだ。『おおかみこどもの雨と雪』で見せたような、「シナリオ」という箱が解体され、単なるシーンの連なりにまで崩されていくあの独特の、とても映画的な構造。それが今作では思いっきり発揮されていて、そこがめちゃめちゃ気持ちいいというか、「映像作家・細田守」だった。さながら15分のショートエピソードを5回繰り返すような挑戦的なスタイルになっていて(ハリウッド映画に慣れている方は驚かれるはず……でも映画にルールはない)、まるで同じコードを繰り返し演奏していくような技法は鮮烈で、特に素晴らしかった。
着眼点もいい。ほぼ完全な密室劇(!)で描かれる「自分が経験していない誰かの時間」にまつわる物語は、自己の意識の外側にあるストーリーに想いを馳せるための想像力への提起になっていて、そこもすごく好みだった。同ポジ使わないと死んじゃう病(笑)はますます悪化していて、その異常ともいえる演出へのこだわりも大好き。
だからこそ、この映画を覆う……そして着地点にもなってしまう一種の思想が、そこがどうしても今は古くて、これを現代社会なり世界なりに今更発信・提示してどうすんねんって所もあり……。執拗なまでに「家族」について描き続けてきた作家だったけれど、結局こういうことを考えている方なんだろう、というあたり……。でもそれは人格の話なので、ある種非難のしようがないし、しょうがないことなんですけどね……。うーん。細田守がアニメーション映画作家として円熟を迎えつつある一方、一種の思想的な面がまだついてきていないのが、残念かもと思ってしまったのが結局第一印象かな。これくらい素晴らしい構造で、演出で、今の社会への何か新しい家族への定義があれば、素晴らしかったのでしょう。
それでも『バケモノの子』みたいな、王道目指してダダ滑りしました的なダサい状態になった時よりも、こちらはずっと意欲的・挑戦的な作品になっているので、そこを観に行く価値は十分にある。メッセージ部分に感動しようと思わなければ、なかなか「映画」を楽しめる作品になっていると思います。ネガティブな評が多すぎるように思えて、そこはもったいないかもな。
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