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ペンギン・ハイウェイのyunumataのレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
4.5
原作を知らない方が観れば、両手を上げて降参するくらいの紛れも無い傑作だし、原作ファンからしても「よくもまぁ、こんなに難しい作品を!」って、携わった全ての方に労いの握手と抱擁を交わしたくなるような作品。とにかく原作の『ペンギン・ハイウェイ』が大傑作なので、森見登美彦を脚本化させたら間違いなしのヨーロッパ企画・上田誠がホンを書き、こまい子を描かせたら右に出る者がいない石田祐康がアニメートさせ……この最強の座組に対する期待に、しっかり応えた映画だったと思う。予告編や冒頭の感じの予想とは、全く違うシーンできっと自然に涙がこぼれるはず。それこそが『ペンギン・ハイウェイ』だったねぇ、って、何度も何度も噛み締めた。
優れたジュブナイルであると同時に、わりと難解なガッツリSFでもある原作を、重要な要素を残しつつ見事にアニメ脚本へコンバートした上田誠の仕事は特に素晴らしいし、生き生きしたキャラクター、そしてイマジネーションを振り絞り組み上げられた映像面での燃えるような若い感性の貢献は金字塔のように炸裂している。一方、原作でもわかりづらい・とっつきづらいSF要素がアニメの映像面で補強されていたかというと、正直そこまでは至っていなくて。ずばり『インターステラー』や『メッセージ』のような内容・質感のある映画なのに、同時にそれらほど平易で解りやすく映像で噛み砕かれ・説明・補強されているとは言えない。だから正直子どもは途中から置いてけぼりだと思うし、大人もジブリ映画のつもりで見ていると、結構多くの方が途中で脱落してしまうかなと思う(だから感想の大半が「おっぱい」なんだよな……)。だからこそ、ああいうSF映画が大好きな方には、一人も逃さず観て欲しいなという気持ちでいっぱいです。
スタジオコロリドは、過去3作品の「シナリオへの感受性のなさ」が大ッ嫌いだったので、日本最高峰の脚本家・上田誠としっかりタッグを組む選択をしてくれたことは賢明だったし嬉しかった。映像化するにはめちゃめちゃ難しい原作を、それでも『ペンギン・ハイウェイ』の映像化ですと胸を張って言い切れるレベルにまで必死に作り上げた(オリジナルのほうが1000倍楽だったはずだ)スタッフにはリスペクトを覚える。監督・石田の十八番である「背景動画」シーンも終盤にばっちり登場します。声優陣も見事だったけれど、やっぱり蒼井優のお姉さんは……ズルいね……///
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