チョマサ

レジェンド 狂気の美学のチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

レジェンド 狂気の美学(2015年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

トム・ハーディがクレイ兄弟を一人二役で演じるギャングの伝記映画。監督は『ロック・ユー!』や『42』を監督したり、『L.A.コンフィデンシャル』の脚本を書いてるブライアン・ヘルゲランド。

予告を見たらわかるけど、クレイ兄弟の合成に違和感はなかったです。ふたりが同じ場面に映ってても違和感がない。どうやって撮ったかはパンフレットに書いてあるのだけど、トム・ハーディーの演技がよくないとここまで上手く撮れなかったと思います。

トム・ハーディーは声も変えて演技してて、兄のレジーはちょっと高めの声だったり、弟のロンは低めの声で話しかたもちょっと足りない感じで、演技わけが出来てました。メイクもロンの眼鏡をかけた時の顔、とくに大きい目が印象的。

R15指定ですが、そんなに暴力的な印象はなかったです。劇中で使われる60年代の音楽や、当時の衣装が、画面をポップにしてて、暴力描写を和らげてたと思います。ハンマーで殴ったり拳銃で撃ったりとか、エグいのが少ないせいもあるか。拷問場面がいい例で、吊るして逆さにして、殴ったり乳首に電流をながしたりするけども、ギャングたちが鬘を被って、裁判の真似事をしながら拷問するので、笑にしてます。あとダフィーが出てて、クラブで歌ってます。これもよかった。

映画はレジー・クレイが警察に紅茶を差しだし挑発するところから始まり、彼が逮捕されるまでを描きます。
クレイ兄弟のどちらもおもしろいんですが、ロンのマザコンぶりや誇大妄想なところやわがままぶりが、見ていて狂気と気持ち悪さと笑いを感じます。ナイジェリアに理想郷を作るから5万ドルくれとか頭がおかしいけど面白い。彼が囲ってる好みの男の顔とか、彼の家のインテリアや映写しているフィルムが際どい衣装で裸の男が取っ組み合ってる映像で、こういった時代考証もおもしろかった。

レジーもギャング仕事ができるしカッコいいし恋人のフランシスに対して誠実なんですが、結婚してからそれまでの彼女への尽くしっぷりが全くなくなるのが、こういう出来る男でも家庭は作れないんだなと新鮮でした。プレゼントしたスピットファイアの幌を出そうとして「俺は整備工じゃねーんだよ!」とフランシスにあたるところとか、ロンを「俺の片割れなんだ」と切り捨てられないのが、見ていてどうしてなのかよく分からなくて引き込まれます。カッコいいし、すごくイケメンに振る舞えるのに、彼と両親の関係とか家庭を作れないなどの欠点との差が不思議でおもしろいんですよ。

クレイ兄弟の一味のジャック・マクビティは、出てくるたびに殴られて出てくるんですが、レジーの怖さや映画に笑いを作ったり、最後はクレイ兄弟を追い詰めるきっかけにもなったり、すごくおいしいキャラです。

パンフレットが表紙もカッコいいし力作です。柳下毅一郎さんのクレイ兄弟についてのコラムや年表、監督とエミリーブラウニングとトム・ハーディーへのインタビュー、プロダクション・ノートが収録されていて、どれもおもしろいです。
特にクレイ兄弟の年表が力作で、モンティ・パイソンにネタにされたり、レジーの葬儀には10万人が訪れるなど、ちょっと信じられないことがたくさん書いてておもしろいです。

チャーリー・リチャードソンが捕まるときの場面もわけわかんなくておもしろかった。倉庫に隠れてて、TVでサッカー中継を見ている。そこに警察隊が突入してきて、チャーリーは捕まるのだけど、そのときにゴールが決まって「ゴール!ゴール!」「ノーゴール!?ゴール!!」って叫びながら捕まるところはおかしかくて面白かったです。
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