曇天

特捜部Q 檻の中の女の曇天のレビュー・感想・評価

特捜部Q 檻の中の女(2013年製作の映画)
2.5
…はしょったなー。贔屓目なしに言うが原作とは全くの別物だわー。

つい最近存在を知って小説取り寄せて、その後映画化されてるのを知ったので、気に入ったものが映像化されててラッキーという気持で読み終わるのを楽しみにしてましたが、なんともひどい映像化です。

原作はもっと時間の感覚がゆっくりで、捜査の経過ももっと細かく入り組んでいた。監禁事件に至る前の別の自動車事故の真相、ハーディの助言による捜査の進展などギミックに富んでいた。映画版は事件の規模を小さくし簡略化することで、捜査対象を少なく=登場人物を大幅削減している。でもこれではミステリーの面白さ半減なんだよな。

キャラクター描写においても楽しい部分がごっそりカット。原作はカールの冴えない中年ぶりや反骨心の描写、アサドの有能ぶりや独断専行のおかしさが際立っていて、語り口に暗さはなくて凄く軽妙、気取っていなくて渋い。新設の特捜部Qに付いていた予算を課長がかすめようとしているのを知ったカールが課長を牽制するのがお決まりのやりとりになっていて、カールの性格を表していた。

むしろ北欧的暗さ(?)を担っていたのはミレーデの監禁パートの方だけ。監禁中の苦しむ姿の経過や心境の変化、犯人に対する憎しみの描写に読んでてとことん気持が落ち込むのだ。ダレずにどんどん読めるのはやっぱり構成の妙、捜査パートとの緩急のつけ方が上手かったからだと思う。監禁パートで何が物足りないって、あの憎ったらしいババアが不在だということ。

原作は生真面目なミステリーというよりもバディ物のエンタメを標榜しているように思えた。他の方の言う北欧版『相棒』というのも遠くないと思います。それだけにこのバランスによる映画化は残念だけど、『ドラゴンタトゥーの女』と同じスタッフが担当したというのなら…致し方ないのかなあ。しかも北欧版でしょ。俺観てないしなあ。唯一良かったのはウフェの演技くらいかな。
読み終わった直後は面白さが薄かったのですが映画を観たらはっきりしてきました。原作は激しくオススメです。
曇天

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