たつなみ

クリード チャンプを継ぐ男のたつなみのレビュー・感想・評価

5.0
『炎の宿敵』鑑賞前に吹き替え版を再鑑賞。
かつて『ロッキー』シリーズを地上波で観ていたおじさん世代の私にとって、年老いたロッキー・バルボアの声が昔と同じ羽佐間道夫というキャスティングはそれだけで感涙もの。
スタローンの主演作の中でも、特にロッキーは羽佐間道夫の吹き替えでなければしっくり来ない。

”英雄“アポロの隠し子という呪縛に苛まれながらも、かつての父の勇姿を追いかけようとするアドニス。
そして、愛する者たちを見送って孤独に余生を過ごすロッキー。
運命的に選手とトレーナーという関係となった2人はいつしか家族となり、それぞれにとっての強大な”敵“に立ち向かうことで己の尊厳を取り戻して行く。

設定や登場人物は新しく、形を変えてはいるが、本作は私の大好きな『ロッキー』第1作目への完全なるオマージュになっている。
世界チャンプ コンランとの試合はかつて絶対的な王者だったアポロに挑んだロッキーと全く同じ。
『俺は”過ち“じゃない』というアドニスの台詞は『(俺は)下町のクズじゃない』とエイドリアンに語ったロッキーの決意とダブる。
そして!ここぞという場面でかかる『ロッキーのテーマ』!!
ここは思い出しても涙が溢れてくる。

素晴らしい脚本に加え、長回しを多用した迫力のボクシングシーンや効果的な選曲と全く非の打ち所がない。
これはアポロ・クリードとロッキー・バルボアの『復活』を描いた最高の”リメイク作品“でもあると強く言いたい。

当時無名だったライアン・クーグラー監督に己の姿を重ねてチャンスを与えたシルベスター・スタローンの英断に拍手を送りたい。