マルメラ

クリード チャンプを継ぐ男のマルメラのレビュー・感想・評価

4.0

ボクシング映画の金字塔「ロッキー」の新章。
好評なのは耳にしてたんですが、ロッキーは最初のやつしか見たことなくて、映画館には行きませんでした。

というのも、ロッキー2とか3とか、、、ファイナルまで全部見るのが苦痛で笑
だって、ずっとボクシングじゃん!!
噂ではハズレもあるみたいだし。

しかし、フィルマークスのフォロワーさんが1だけ見てれば何とかなると仰っていたので、それを信じてレンタル。

結論から言うと、テーマは凄い好き!!
内容も悪くない。
けど、、、一点だけ。

では、中身に。
相変わらずの長文になります笑

まず、テーマから。
これは脚本&監督ライアン・クーグラーの境遇と同じ。
そして、現代を生きる若者にとっても同じ。
自分はかなり共感できるものでした。

昔は良かったと人々は言う。
映画にしてもそう。
黒澤明が〜。ヒッチコックが〜。
音楽にしてもそう。
ビートルズが〜。松田聖子が〜。
野球にしてもそう。
王、長嶋が〜。
ある程度成熟した文化においては、こういう物言いをする人が多い。
そんなことは分かってるんだよ!!
映画好きだからこそ、それは痛いほど分かる。伝説は伝説。超えられねぇかもしれないけど、仕方ないじゃん。やりたいんだから!!

でも、今だって良いのあるんだよ!!
ノスタルジー浸ってんじゃなくて、今のモノも見てから判断しろよ!!
伝説から学んで新しいことやろうとしてるんだよ!!
っていうテーマかなと。

ライアン・クーグラーのアポロに隠し子がいたらというアイデアを拾ったスタローン。
当時無名の青年のアイデアを受け入れ、監督・脚本までやらせる度量の大きさ。
スタローンはやっぱり面倒見が良いんだな。
自分もそうだったしね。
だからこそ、ロッキーは伝説なんです。

テーマをまとめると、「伝説と言われている過去を超える挑戦」だと自分は解釈しました。

そして、音楽の使い方がこの映画はとにかく秀逸。
あのテーマをどこで流すのか。
他のサントラも凄くいいんです。
さらには、どこで無声にするのか。
ゴングの音や観客の声など、こだわってんなぁー。

脚本的にはどうか。
主人公はアドニス。
彼はアポロの隠し子で、施設を転々としてきたが、正妻に引き取られてからは何不自由ない生活をして、大学にも行き、一流企業に就職。
それでも、ボクシングがやりたいという想いから退社して、まずアポロが在籍していたジムへ。
ここまでの流れは良い。
YouTubeで親父とロッキーの試合を見ながら、身体が動いてしまうというシーンが印象的でした。
アポロの側に立つのではなく、ロッキーの側に立っていることから分かるように。
彼は親父と相対したい。つまりは親父に会いたいという想いがある。
これを台詞ではなく、ト書きで表現したのは凄く良い!!

何ですが、ここからです。
メキシコの試合はただのケンカだと言われ、ジムに受け入れてもらえないアドニスはフィラデルフィアへ向かう。
ロッキーに教えを請う為に。

ここなんです!!!
この映画の中で唯一納得がいかないのは。
アポロの息子だとロッキーに告げたらダメだろ!!
後の、ヒロインとのケンカのシーンで「色眼鏡で見られたくなかった」と言っていますし。
リングネームも最初はクリードという名前を使ってなかったことからも、親父の力ではなくて自分の力で上がっていきたいという信念がこの主人公にはあるはずなんです!
だったら、ロッキーにアポロの息子だと告げずに、自分の力でコーチをするようにしないと。
ロッキーも「ここまでしつこいとはな」みたいなこと言って、仕方なくコーチを引き受けてますが。
結論から言うと、アポロの息子だからコーチを引き受けたに過ぎない。
それじゃ、テーマとブレるし、主人公の信念ともズレると思うんです。

例えば、しつこく迫るアドニスに嫌気が刺すロッキー。
そんなある日、昔の自分と同じように誰にも指導を受けれずに鍛えているアドニスを目撃する。
アドニスが昔の自分と重なったロッキーは「一回だけスパーリングしてやる。それで見込みがないと判断したらスッパリ諦めろ」と言い、スパーリングをする。
荒削りだがどこかにアポロの面影を感じたロッキー。
もしかしたらと思って、名前を聞くロッキー。
クリードと言わず、母親の姓を名乗る。
こいつ見込みあるなと感じて、鍛え始めて、同じジムの奴と対戦した後にロッキーも事実を知るとかさ。

名前じゃなくて、実力でロッキーをコーチにしないと!!

ヒロインが必要かどうか問題。
まぁ個人的には削っても良かったし、あっても良かったかな。
ただ、難聴という設定を盛り込んだなら、彼女が今を生きていることを作品内で活かさないと。
例えば、序盤でロッキーに相手にされず困っていたアドニス。
将来的に耳が聞こえなくなることを受け止め、それでも今出来ることを真剣にやっている彼女の姿に共感し、誰にもコーチして貰えなくても自分で練習するようになる。
そこを、ロッキーが目撃する。
とかさ。
なんかしら、あの彼女が作品内にいる意味を持たせないと。

ロッキーがコーチしてからはトントン拍子で話が進む。
ロッキーの病気という障害が発生し、そこから2人の絆が生まれていくという流れはわかるが。
アドニス自体の困難が無い。
アポロの息子だと言ったらロッキーにコーチして貰えて。
ヒロインをデートに誘ったらすぐにOKして貰えて。
アポロの息子だから、タイトル戦を組んで貰えて。
結論はリア充。

だから、やっぱりロッキーにコーチをお願いするというスタートの段階で障害を与えておくべきだったんだと思います。

あと、タイトル戦の申し出の時。
親父の名前で出るならという条件に一番反発すべきなのはアドニスのはずなんです。
結局、親父かよ!と。
それをどう乗り越えるかじゃないですか。
ロッキーが病気という設定を入れたんなら「チャンスはいつも回ってくるわけじゃねぇ。どんな形であれチャンスを掴めねぇなら辞めちまえ」くらいのことを言わせるとかさ。
ロッキーがアポロの息子だと知らずにコーチをしたとするならば。
「お前が一番親父の名前に固執してんじゃねーか。名前がなんだ?俺はアポロの息子だからお前をコーチしたわけじゃねぇぞ」とかさ。
つまりは、主人公の内的葛藤が無いんですよ!!

ラストの試合。
ロッキーとアポロを足したようなファイトスタイルという進化を見せたことはテーマに一致する所で、良かったとは思う。

相手の登場シーンも良かったし。
細かい演出も光っていた。

テーマは凄く好きだし、共感もできる。
演出も良かったし、細かい気配り工夫もあった。
ただ、テーマと主人公の葛藤が一致していないのが納得いかず。

ただ、この映画は面白かったです。
それは事実。
色々言いましたが。
スタローンの男気に敬意を表して、4.0のスコアを付けさせて頂きました。
マルメラ

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