回想シーンでご飯3杯いける

こちらピープリー村/Peepli [Live]の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.3
つい先日に日本映画「五億円のじんせい」のレビューで「アーミル・カーン周辺作品っぽい」と書いたけれど、探してみたらやはり近い題材の作品があった。アーミル・カーン・プロデュース作「こちらピープリー村/Peepli [Live]」。

「五億円のじんせい」同様に人生の価値を金額という定量価値に置き換える手法。本作では、自殺者に10万ルピーを補償する政策と、そのシステムを利用する事を宣言した農民の話。もちろん人生の価値を金額化する事を良しとする作品ではなく、敢えてそれを題材にする事で、インドの格差社会をシニカルに描き出そうとする試みである。

10万ルピーは命に換えるほどの金額ではないのだが、その制度を利用せざるを得ない農民の苦しい生活。更に、彼の決断を利用しようとする政治家や、執拗に追うマスコミの姿へと、作品の視点は拡大していく。

あくまで少年の成長物語として仕上げた「五億円のじんせい」と、社会派作品に仕上げた本作で、作品のテイストは違うものの、根底にある格差社会の問題や、周囲の善意が本人を追い込んでいく構図には共通するものがある。

本作に関しては、主人公の人物像がやや地味である事と、それに対して題材を盛り込みすぎた感があり、全体のバランスは今ひとつといった感じ。もし比較するならば「五億円のじんせい」の方が面白い。