もじゃ太郎

スター・ウォーズ/最後のジェダイのもじゃ太郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.1

このレビューはネタバレを含みます

映画としては二流。期待が高かっただけにがっかりした。でもスターウォーズとしては一皮向けていい繋ぎになったと思う。色々積み残しがある。全てはエピソード9に。

<良かった点>
(1)良い意味でも悪い意味でも「映画っぽく」なった
これまでは回想シーンなし、勧善懲悪の単純明快なストーリー・演出だったから何も考えずに素直に見れたが、今作は少し演出が複雑になっていた。
例1)カイロ・レンとレイの交信シーン
違う場所に居ながら通じ合っている演出が映画的で良かった。その分、これは現実なのか(そうだとするとフォースの新たな使い方になるわけだが)、それとも演出なのか?という混乱が生まれて複雑な印象を受けた。分かりやすさこそスターウォーズ なのに変に映画的だった、が、映画の良さを上手く活かしきれてない気がした。
例2)色彩の綺麗なシーン
これまでボスキャラvsジェダイの殺陣シーンは一大シーンとして気合が入っていた。旧3部作ではダースベイダーがルークと対峙する際、最後以外はライトセイバーの音のみにしていたり。霧がけていたり、ムードを盛り上げた。
今回の戦闘シーンは大きく2つ。どちらもとても印象的な赤が基調として印象深くなった。また、今回は飛空挺での戦闘シーンも良かった。白い砂の大地に赤の排気ガス。山場を盛り上げるいい演出だった。こんな演出、今までにはない映画的な演出たった。

(2)これまでのサーガを断ち切って新たな世界に飛び立った
旧作品からの人気キャラからの総入れ替えが起こった。これは7で先送りにしていた焼き直しを防ぐ大きな成果だ。監督としてもこの覚悟は相当なものだったろう。
さらにレイの過去が語られてるが、(ルークの話が真実ならば)レイの生い立ちがスカイウォーカー家と関係がない一般家庭だったことが明かされる。これまでスターウォーズとはスカイウォーカー家の「選ばれし者」の(聖書のキリスト的な)物語であった。が、その流れを完全に断ち切った。「選ばれし者の物語」から「みんなの物語」に進化させたといってのい。聖典である書物を焼くシーンや名もない少年が夜空を見上げるシーンはその象徴だと思う。
(この変化を許せるか/否かが賛否の分かれ目だと思う)

<残念だった点>
映画として致命的なものが多い。本当に残念。
(1)第一は、前半のミッションが後半全くの無に帰すナンセンスさ(映画として致命的)。(ネタバレになる可能性あるので多くはかけないが)具体的に「緋色のバラ」の件から始まる一連のミッション。あそこまで危険を冒して簡単に折れていいのか!結局何のためだったんだ。。人によっては「大どんでん返し」とか「予想を裏切る展開」と評されるかもしれないが、積み上げて来た話をさらっと手のひら返しするのは映画を見せる上で禁じ手だと思う。これじゃなんでもありになっちゃう。

(2)第二にキャラの描写が粗い(これは7のBB-8のときからそうだが。)。ダラダラとどうでもいいシーンが多くてメインキャラの描写がイマイチで感情移入しづらい。前半の無駄使いするなら、もっと個々の人間にスポットを当てて欲しかった。
例1)BB-8や変な鳥(?)など言語を喋れないキャラクターたち
これまでイウォーク族やウーキー、R2-D2など喋れないキャラクターも鳴き声やヴィープ音だけで感情が伝えることができていた。理由は各キャラクターの心理描写や性格を丁寧に描いたからだと思う。これによって言葉を発せないキャラクターも性格がよくわかって愛着が湧いた。対して今回新たに登場した変な鳥もウーキーとのやり取りがあったが、描写が弱いため性格や関係性がよくわからず、「なんとなく可愛いキャラ」で終わった。きっとディズニーが年末商戦に向けて投入した浅はかなキャラなんだろうなぁと勘ぐってしまう。
例2)BB-8
見た目からしてR2-D2と同タイプのキャラ=賢くて頼りになるやつという印象があるから観れるが、どんな奴か未だによく分からなくて好きになれない。R2がいるからあえて描写を省略したのかな?という考え方もできるかもしれないがそれなら存在意義が薄い。
例3)鍵の男(代理)
この男はボバ=フェットととの対比が鮮明。ボバ=フェットはダースベイダーと対等に交渉する威厳さがあり、ちょい役だが人気だった。一方の鍵の男の謎の多さ。一応、種明かしはあるものの、展開的に何者?感が強く納得感がない。やりたいことはわかるけど、必然性を持たせるには語りが足りない。
例4)ローズ
きっとディズニーの意向なのだろう、アジア人の登場。これにより、女性(レイ、ホルド)が活躍します、黒人(フィン)もいます、アジア人ももちろんいますと人種の多様性を訴求しているのが見え見え。社会的な要請かもしれないが、こんな端役で話をややこしくするくらいならいない方がマシ。これにより風呂敷を広げすぎてピントが余計ボケた。

(3)第三に妙なギャグ演出とパロディ感が腹立たしい。冒頭の通信不具合の件(このシーン、いるのか?)、フィンの件や「May the force be with you」のお見合いに苛立ちすら覚えた。スターウォーズファンによるパロディドラマでも作ったのか?たしかにこれまでも緊迫した中でC3PO等がコミカルに緩和させるような場面はあったけど、そういった微笑ましい場面での緩和シーンは各キャラクターを描いた上で発生するユーモアだと思う。云々。

と、映画ファンとしていろいろあるけど、何だかんだでスター・ウォーズはスター・ウォーズ。残念だった点の1つ目、2つ目で挙げたような構造的な欠陥は映画ならばNGだけど、現実問題、ありがちな気がする。そういう意味ではよりリアルな描き方という捉え方もできる(この解釈をするか/しないかが評価を二分する要因になったと推察します)。
良きにせよ悪きにせよ、スターウォーズを映画として一段上げようとした監督の意図・勇気も見えたし、エピソード9への期待も込めてスコアは3点台後半で!