りっく

スティーブ・ジョブズのりっくのレビュー・感想・評価

スティーブ・ジョブズ(2015年製作の映画)
4.0
伝記映画は事実を羅列し、こんなに偉大な人物でした!とWikiを見てるのと変わらない作品に成りがちだが、3度の新製品発表会直前の時間・空間に絞り、彼と長年関係性がある人物を的確に配置することで、世間がイメージするジョブズから人間性を浮き彫りにした1作。

冒頭のアーサー・C・クラークの白黒インタビューから、誰もいない発表会会場の座席を俯瞰で撮り「赤」を強調。そこからざらついた画素で熱き1980年代~90年代を活写するダニー・ボイルの色彩感覚は見事。密室から屋上に移動する空間の使い方も計算しつくされている。

本作で最もグッとくるのは、やはり父親と娘の物語に焦点を絞った作りになっている点。ジョブズは人間的にクズだとは思うが、屋上の場面から最後のスピーチに向かう場面は否応なく感動させる。万雷の拍手と無数のフラッシュの中、本人がこだわっていた「完全なる真っ暗闇」からジョブズという像がまさに浮かび上がるラストカットは鳥肌もの。
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