綾

怪物はささやくの綾のレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
5.0
あああ… めちゃくちゃ好きなやつだった…

多くは語らず 十分な余白を残し、それでいて画や俳優の表情で完璧に視せる。魅せる。冒頭から、細かな感情の機微を何一つ見逃すまいと見入ってしまった。

本作での「物語」の扱い方がすごく好き。
創り物でありながら 人が生きていく上で必要なもの。現実世界と乖離しながら その実 地続きに存在しているもの。ある事象に意味を持たせるもの。言葉のかわりに想いを表現するもの。人と人を繋ぐもの。時になにかを乗り越える力を与えてくれるもの… 挙げればキリがないけれど、私はそんなふうに物語を愛しているし、この映画からはそんな物語の力をしっかりと感じた。

劇中に登場する3つの物語も、その全てに魅入った。影絵のような画、木(リーアムニーソンの声良すぎ…)の厳かでありながら淡々とした語り口、一筋縄ではいかない結末。全て良い。
主人公コナーのように、子どもには大人が思う何倍も何十倍も 真実を見抜く力があると思うし、複雑なことを理解していると思う。
だから私は、易しい語り口で ときに厳しく ときに優しく 子どもたちに真実を語りかけてくれる童話が好き。本作に登場する物語は、そんな童話の良い例だと思う。
この映画の原作が児童文学だというのも納得。児童文学特有の、誠実で嘘のない空気感が伝わってきた。原作読んでみよう。
あぁ 凄いなあ。私もそんな力を持つ物語をこの手で生み出してみたいなあ。

あと、もうこれは深読みの域ではないか…と思う気付きがいくつかあったので、一度誰かと語り合ってみたいなあ。余白の多い物語ならではの魅力。

物語の流れを知った上で、もう一度観たい。

この作品、映画館で観ようと思いつつ余裕がなくて行けなかったやつなんだけど、めちゃくちゃ映画館で観たかった… 大きなスクリーンで観るのに最高の映画だ…
綾