継

光をくれた人の継のレビュー・感想・評価

光をくれた人(2016年製作の映画)
4.0
灯台守のトム(ファスベンダー)はイサベル(ヴィキャンデル)と結婚して二人きりの孤島暮らしを始める。
2度の妊娠はいずれも流産に終わり, 二人は打ちひしがれるが
そんなある日, 一隻のボートが島に漂着する。
中には既に死亡している男性と泣き声を上げる赤ん坊が。

急ぎ報告をあげようとするトムを制止するイザベル,
赤ん坊を私達の子にしようと懇願する。
職務として正しく対処したいトム, だが失意の底に沈むイザベルをこれ以上悲しませたくはない。
やがて意を決したトムは, 子が生まれたと虚偽の報告をし, 男を島へ埋め, 2つの小さな墓碑を引き抜く…

✞✞
原題『The Light Between Oceans』.
トムの台詞「··· この島も2つの違う海を見ている」がこの原題へ繋がるわけですけど,
これが2つの大海に挟まれた島の立地を指すだけじゃない事は自明の理です。

親の心に光を灯す幼子の存在.
嘘と真実, 正しい事と愛する人を守る事, 生みの親と育ての親 etc…は, 異なる潮流がぶつかり合うさまを🌊,
罪を犯すこととそれを赦すことは, 異なる海水の色や温度が溶け合ってゆくさまを表すようでもありました🎨。

第一次世界大戦後を舞台としている作品。
戦勝国が敗れたドイツ側へ不当なまでに罪を負わせて領土と巨額の賠償金を奪った事は
トムとイザベル夫妻が赤ん坊を我が子とした事に重なって映ります。

結果的にヒトラーを台頭させる温床となったベルサイユ条約。罪の対価のはずの罰が禍根を生み, 教訓どころか更なる犠牲者を出した第二次大戦の苦い記憶。
太宰治「人間失格」には主人公が罪の対義語は何か?と考えるシーンがありますが, ハナ(ワイズ)が (亡くなったドイツ人の夫の遺志に照らされるように) 罰するより赦す事を選ぶのは この問い掛けへの答えであると同時に, 過去の負の歴史と同じ轍を踏んではいけないという作り手の思いが込められたものに感じられました。

“必要とする人のため、光を守る”
灯台守として暗い海に光を灯(とも)してきたトム。
時を経たクライマックスでその横顔を照らす夕陽は, かつて戦地から生還した直後の,抜け殻のようだった自身に光を灯してくれたイザベルのようでした。
継