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Wの悲劇のBaadのレビュー・感想・評価

Wの悲劇(1984年製作の映画)
3.8
これ、たとえば70年代後半に映画化していたら斬新だったんでしょうが、この時代にやった、ということは上手に外してみせて、新鮮さを狙ったということなんでしょうか?
この時代にスタニスラフスキーって、どこまでクラシカルな劇団なのか・・・

映画自体は丁寧に野心的に作られていると思います。ただ、ベースになっている舞台劇の原作が余りにあまりの内容なの(最初の方でヒロインもチラッと言ってますよね、馬鹿みたいな芝居でもチャンスはチャンス)と、その芝居の方にあまりにも重点が置かれすぎていて、普段の生活の部分でのロマンスの描き方がやや駆け足なのが重なって全体的にちょっと時間不足で物語を語ることのみに力が入った映画になってしまっているところが惜しい。
世良さんとの絡みで良い場面が沢山あったのですから、その辺をもう少しゆっくりと見せて欲しかったですね。

同じ監督の『早春物語』での遊びの多いつくりはこの映画で勉強した成果だったんでしょうか。

薬師丸さんの魅力もそこそこ出ていましたが、それ以上に三田佳子さんが魅力的でした。当時岩波ホールでかかっていて、加藤周一が絶賛していたパウロ・ロッシャの映画、『恋の浮島』でも準主演でしたが、このころは本当に押しも押されぬ大女優でしたね。

それにしても、団塊の世代以上年齢の日本人映画監督って、吉田喜重以外は舞台劇を入れ子に使うのがいまいち上手ではない気がする。このへん、オリヴェイラとかリヴェットとかラテン系の監督は抜群に上手いよね。才人の澤井監督も例外ではなかったようですが、これはこれとして味があってよかったです。

(狙い過ぎ、かな? 2008/5/29記 修正済)
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