チョマサ

ヒメアノ〜ルのチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

青春映画だな。描かれるのは高校を卒業してから何年も経ってからだけど、森田をきっかけに高校時代に焦点が向く内容になっている。森田は高校の頃に受けたいじめやパンフレットによると実家に警察の捜査が入って、たぶんだけどそれをきっかけに高校を卒業してからの将来を捨ててる。だからいじめっ子を殺してるわけだし、岡田と飲んだときにああいったことを言う。生活もどん底で、安藤が岡田に偉そうに話した「日々の不満を解消するために生きる」のが人間の生活なら、森田の場合は今まで受けた暴力や理不尽な出来事をああやって解消するために生きるのが彼の生活なんだろうか。

かといってずっと鬱々した語りかたではなくて、所々にギャグは入るのがおもしろいんだよな。前半のラブコメギャグと殺伐とした後半に分かれてるように見えるけど、後半もギャグが多く出てくる。

安藤は部屋にあるチェーンソーや髪型を変える、モデルガンかどうか俺は分かるし、と何度も笑わせてくれる。最後の岡田と森田の取っ組み合いだって、岡田が責任を感じてる出来事を森田は覚えてないといった、こんな場面でも笑わせてくれるし、ギャグが入ることで真面目な雰囲気の場面もより面白くなってる。事故って片足が抉れてる描写も彼のまた遊ぼうの言葉でユーモアもあるし狂気も増してる。

それにギャグとシリアスの塩梅がいいから過去の回想の何もかも明るい場面がより映える。そして森田の色々な面が見えて、すごくおもしろかったな。

途中でタイトルとクレジットが入る構成や、明らかに色調が暗くなっている撮影、森田の頭の中の幻聴とか森田の感覚に同調できるような演出はよかった。パンフレットを読んだらフロムダスクティルドーンから、あと吉田監督の映画は二部構成が多いのと、この映画のスタッフは塚本監督組のスタッフが多いのを知った。あのタイトルの出し方はなんとなく『アウトレイジ』と『見えない恐怖』ぽかった。

真魚八重子さんのTwitterで知ったけどこのパンフレットの表紙も『セリ・ノワール』という映画のジャケットを真似てるらしくて、その映画も気になる。

まぁ親に偽の電話をかけて住所を聴くのもおもしろかった。
高校のときの殺人が何でばれてないのか、大ごとだよなと思う。殺しの描写も頬に穴が開いたり、頭を叩いて失禁したり、黙らせるために顔を殴るといった、バリエーションに富んでておもしろかった。

『クリーピー』の方が狂気では段違いなんだけど、こっちは殺人鬼の青春といった感じで全然ちがう映画と思う。
あとなんか黒にショッキングピンクのデザインがこの手の映画に多いけど、なにからこの流行って始まったんだろうな。恋の罪とか冷たい熱帯魚だろうか。
チョマサ

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