半兵衛

ウイークエンドの半兵衛のレビュー・感想・評価

ウイークエンド(1967年製作の映画)
3.5
ブルジョワの転落を皮肉りつつも、テーマを掲げたり美学に走ったりせず軽快で不快な活劇に仕上げているのがゴダールらしいかも。でも取り留めのないドラマと画面でやっていることがひたすら乖離するという内容を把握するのを拒むかのような語り口に戸惑い、何を見せられているんだという状態に陥りそのまま映画を見終えた印象に。

それでも渋滞の様子を延々と映すさなかに手塚治虫の漫画みたいな遊び心を入れる長回しや、度々行われる長回しでの追いかけっこなどゴダール流の人間の躍動感を軽々ととらえたテクニックが不思議と楽しくそういうスパイスが刺激として成立しているのも事実である。その一方で最大の刺激になるはずなのカニバリズムをあっさりと処理するところがゴダールらしい。

主人公が乗る車が暴走し、自転車や車を次々とはしっこに寄せ倒していくのがどこかコミカルで笑えてくる。あと中盤からこの時期のゴダールらしく革命やブルジョワについての文章を延々と語っていくが、立派なお題目を唱えた文章のなかでボケッーとしながら過ごしている人たちをとらえた映像を見ているともしかしてゴダールは笑わすためにこんなことをやっているのではと思ってしまった(実際あまりの反応の薄さにちょっと笑えてきた)。

それと同時に大事件が矢継ぎ早に起きているのにどこか淡々としている主人公夫婦の様子を見ていると、商業映画の世界が作品に感情を大量に入れて活劇を削いで魅力を半減させていることにゴダールがストレスを募らせているのではを感じた。実際このあとゴダールは商業映画と訣別して独自の道を歩んでおり、大手映画会社のシステムとは正反対の方向性を持つこの作品を見るとそれも自然の流れかもと思えてくる。

たびたび挟まれる女性の股間や変な下ネタにゴダールの変態な性癖が感じ取れる。
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