純

カプチーノはお熱いうちにの純のレビュー・感想・評価

カプチーノはお熱いうちに(2014年製作の映画)
4.0
最初から最後まで音が繊細ですごく綺麗だった。音楽も好みだったけど、それ以上に自然の音や生活の音がひとつひとつはっきりしてる。雨の音とか息の音とか、「今生きてる世界」の美しさに気づかせてくれる。

突っ込みどころを先に言うと邦題。「???」って感じ(笑)ただ原題の『シートベルトをお締めください』も微妙…。だってシートベルトが出てきた(と思われる)のって、あれ?最後の方のあれですか?あまりに不明確すぎませんかね?(笑)わたしの中で、タイトルは婉曲的でもその映画をぴったり表していればそれは素敵なタイトルだと思うんだけど、これは曖昧でよく分かんない。内容も構成も好みだっただけに題名が残念…。

うん、でも、本当に内容は好み。題名軽そうだけど落ち着いた人間ドラマで、甘すぎなくて良い。角田和代さんの「この映画を観たら、生きるって良いなあと思うはず」って言葉がドンピシャ!すごく人間らしくて身近に感じられる作品だった。生きることとか、雨に濡れることとか、友達が増えることとか、日常が愛おしくなる。

あと、人間の多面性についても考えるところがあったかな。人って一方向から、もしくは何か一つを基準にするだけじゃ計れないよね。そもそも人を計るなんておこがましいことだけど、どうしても評判とか印象に惑わされて良い面が見えなくなる時はある。それでも、周りの人がその人をどう言おうと、自分だけが知ってるその人の素敵なところがあるし(そういう面って他人に教えたくないよね。自分だけの特権にしたいよね。)、理由なく惹かれるところだってある。「周りはわたしたちを不釣り合いだって言うけど…」のセリフ最高。あのセリフのための映画って言っても良いのでは。そしてエンドロールの工夫も良い。違う角度から観たあの場面この場面がたくさん。

最後の構成も良いね。題名とは違って、最後のぼかし方上手い。ある程度予想できる段階まで見せといてあの展開。こんなに時間が経ったんだなあって思わせるのが本当に上手だった。限られた人生のキラキラが詰まってて好きだったなあ。あんな綺麗な海を見せるのもずるいし、アントニオ役の人の外的内的変化もこの映画じゃめちゃめちゃ生きてるよね。

人間は人間と関わりあって生きていくんだなあと、それがどんなに幸せなことなのかと、優しく教えてくれる映画だった。
純