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ラ・ラ・ランドのnucleotideのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
5.0
人々が突然歌い、踊り出す。

それはミュージカル映画が生来備えた特徴であるが、付帯的に虚構性が提示されるために、所詮現実から乖離した夢物語であり、スタジオは夢工場であると揶揄されていた歴史がハリウッドにはある。

『ララランド』が巧みなのは、その虚構性が即ち2人の身体的距離であるという図式を創り出した点にある。

冒頭、渋滞したハイウェイでのダンスアクトに始まり、夕闇の幻想的な遠景や極彩色を散りばめたデザインし尽くされた画作り、グリフィス天文台でのデートなどこれら全てが虚構性の強調であり、その蓄積がラストの10分間に結実し涙を誘う。





意味の反転や暗示もまた巧みだった。

劇中「Another day of sun」が流れるシークエンスが2箇所ある。1度目は先述したオープニングの渋滞の場面。そして2度目はラスト10分の場面。この意図的な再配置によって「Another day of sun」という言葉に全く異なった意味を纏わせることに成功している。

そしてこの映画のメインテーマ「City of stars」の1番と2番の結びにはこうある。

That now our dreams
They've finally come ture



You never shined so brightly

成功を夢みた2人の願いが託されたこの曲が、まるで映画のラストを暗示しているかのようではないか。





MGMミュージカル作品をはじめとして、『ニューヨーク・ニューヨーク』『マルホランドドライブ』など様々な映画の間テクスト性は単に映画ファンを喜ばせるだけのものではなく、物語と有機的に絡めた知的な引用であった。傑作。
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