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ファントム・スレッドのnucleotideのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
3.5
「結婚」というモチーフに「呪い」という言葉を重ねていることから察するに、極点で狂気に転じる物語の着地は2人だけの愛の形などというものではなく、ミザリー型支配と諦観の交錯した悲喜劇であり、同時に屈折した家族観を抱えるポール・トーマス・アンダーソンのミソジニーであるように感じた。

監督が語る、ヒッチコックの『レベッカ』を念頭に置いて製作したということの意図が、秘密を抱えたまま死にゆくことであるとするならば、「愛している」というウッドコックの言葉の裏地に見えない糸(『Phantom thread』)で縫い付けられていたのは透徹したディスコミュニケーションであり、PTA映画において執拗に反復される倒錯した家族像の一端なのではなかろうか。
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