トムクルーズやジョントラボルタが所属してることで有名な宗教団体サイエントロジーについてのとんでもないドキュメンタリーだった。元大幹部や何十年も信仰を続けてた人々へのインタビューと、過去の映像や写真を大々的に盛り込んでて、サイエントロジー側はこんなんガセや言うてるらしいけど、彼らが経験を語るときのビビッドな真実味を見るとねーさすがにねー。これはヒドイ。まず、前半、サイエントロジーの起源をまとめてるんやけど、これが面白くて、創立者ロンハバードは元SF作家、それがCLEARと呼ばれる似非心理分析とヒーリングみたいなんを始めて大ヒット。要は過去のいろんな黒い出来事を洗いざらい吐き出して、スッキリするって感じのセッション。で、それから、クリアのメソッドに心酔する人たちを組織化し、メソッドを宗教化し、ブリッジと呼ばれるヒエラルキーを構築。指定する修行の期間と積んだお金に応じてブリッジを上って行く仕組みやねんけど、頂点に近づくとサイエントロジーの奥義が伝授される。それはこの宇宙の真実をハバードが解き明かしたもの! 一体どんな内容なのだろう。何十年もかけ大金をはたき遂にそこまで到達した映画監督のポールハギス(あの大傑作クラッシュの!)の反応の良さ! What the fuck?!笑 要約すると、宇宙はジヌーと呼ばれる帝王に支配されていて、7500万年前に地球そっくりの星で人口が溢れたため、人々を送りつけた先が地球。ということで、人類はその時の人々の魂がとりつきまくってて、それで不幸になってるのだ! WTF?! てなるよねー。けど、それを知ったあとも皆さん信仰を続けるのです。続けなやってられへんねやろな。やがで巨大なるカリスマのハバードが死に、2代目リーダーとしてミスキャベッジが手綱を引き始めるとサイエントロジーはますます営利的に。すごい戦略をもって税金を問題にしてきた国税局とバトり、トムクルーズを広告塔にしてますます勢力拡大を図る。ところが少しずつパラノイアな狂人となりゆくミスキャベッジ。裏切り者が出ないよう、恐喝、監禁、暴力、などなどヤバイ手段を用い始め、初めはそれにすら盲従していた信者もとうとう目が覚め、遂には脱退……この辺の事情の恐ろしさと、それを語る人たちの苦渋の表情には心が締めつけられる。膨大な時間を費やし、多額の金を払い、その結果、自分が信じていたものがとんでもない代物だと分かったとき、そしてそれを認めるときの衝撃とはいかなるものだろうか。想像して苦しくなった。それがために娘と縁を切らなければならなくなったおばさんの言葉には涙が出た。それをこうやってカメラの前で語る勇気ってすごいなと思う。後悔しかない。恥じている。愚かだった。マジやりきれねー。ホントに盲信とは恐ろしいものだ。我々人間とは信じるということなしには生きていくことができない生き物だ。なのに、最も重要な問い、すなわち、自分が何を信じているか、何ゆえそれを信じているか、それがあらゆる点で信じて裏切られることがないものか、そういうことには無頓着で、ほぼ全員が何らかの形の盲信状態で生きている。これは恐ろしいことだ。いっそ義務教育か何かで、自分が信じてるものを疑い、分析し、研究し、確認し、確信に至るまでの批判的メソッドを教えた方がいいんじゃないか。あ、でもそれ義務教育じゃ無理か、今の社会の在り方を疑わないように意図的洗脳が始まるのが義務教育やもんね。けど、一体自分は何に洗脳されて生きてるのか、何で洗脳して生きていくべきなのかは、絶対に誰しもが深く考えるべき問題だと思う。そして、可能であれば絶対的確信に到達し、それを持ちながらも、水や空気のように、柔軟に自由に生きていくべきだと思う。30年、40年、50年先の人生の結果はすべて、今という瞬間瞬間に自分が信じていることの具体的な結果の集積であり、過ぎてしまえばもう生き直すことはできないし、年月を経て膨大になった集積をたったひとりで背負わなければならないのは自分自身である。その集積が最高にすばらしく輝かしく価値のあるものでなければ、何とヘビーな重荷になることだろう。そうならないためにも。