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LION ライオン 25年目のただいまのpanpieのレビュー・感想・評価

4.5
鑑賞前に観た方のレビューを掟破りで読んでしまい今日の休みはこれを観ると決めて観てきました!
号泣必至の今作!
観た方のレビューも高評価で期待値上がりました。(#^.^#)


インドが舞台の今作。
インドと言えば列車に団子の様に乗る様子があまりにも有名だが冒頭は幼い兄弟が走る列車に飛び乗る所から始まる。
何をするの?と思ったらどうやら積載された石炭を盗みに来たらしい。
大丈夫?見つかるよ!と思っていたら案の定見つかった!(>_<)
でもトンネルに入り追いかけて来たおじさんも諦めてトンネルを過ぎると二人は列車から飛び降り石炭を牛乳に替えて家路へ着く。

5歳のサルーと兄のクドゥ。
仲良し兄弟。
優しそうな母と幼い妹の四人暮らし。
サルーには父親がいないのかな?
石炭から変えたわずかな牛乳はどうみても1Lパックよりも全然少ない量をビニール袋に二つに入れられていてそれをサルーに持たせるから落とすんじゃないかなと観ていてヒヤヒヤした。
それを母は飲まず三人の子供達に分ける。
自分のミルクを母親に差し出すサルー。
優しい子!
そして本当に可愛い!
ここでもうサルーに心を鷲掴みにされた!

ある日兄は生活の足しにとまた夜に働きに行くと言う。
連れて行かないと言われるがどうしても兄の手伝いがしたいサルー。
5歳の子に何が出来ると言うのかと思うけど兄もお願いするサルーに根負けして連れて行く事に。
汽車に揺られているうちに兄に抱っこされて寝てしまうサルー。
どんなに揺り起こされても眠くて眠くて起きられないサルー。
だって5歳なんだもの。
仕方がなく寝ぼけ眼のサルーをベンチに寝かせ「絶対ここを動くなよ!」と言い残して兄は暗闇へと消えてゆく。

深夜列車も止まり人っ子一人いない駅のホームでサルーは目覚めてしまった。
案の定兄の言いつけは覚えていなくてふらふらと兄の名前を呼びながら探し回る。
そして何故か止まっている列車に乗ってしまう。
列車の中でも兄の名を叫ぶサルーはそのまま泣き疲れて寝てしまう。

目覚めると列車が動いている!
びっくりして飛び起きるが停車中も昇降口のドアは開かず窓には格子が付けてあり窓からも出られない!
兄の名前を呼んでも助けてと泣き叫んでも誰も助けに来てはくれない。
泣き疲れて何度も何度も眠りにつくサルー。

そしてとうとう列車はカルカッタへ着く。
やっとドアも開き列車から降りる事が出来たが駅は人でごった返している。
まさにインドの風景。
大人の背より少し高い所へ登り兄の名を叫んでみる。
汽車に乗る人、ホームを出る人が去ると駅はがらんとしてしまい途方に暮れ佇むサルーは一人ぼっちだ。

喉が渇き水を飲んでいるとサルーより少しだけ大きい女の子が現れ水を飲んで去って行く。
女の子は一人で歩いて行く。
その後をついて行くサルー。
やがて地下通路のような所へ行くとそこには子供だけ4、5人が通路にダンボールを引いて座っていた。
サルーは少し離れた所にしゃがみ込んで子供達を見ていたがその一人の子供がサルーにダンボールを差し出す。
言葉は交わしたりはしないが少し落ち着いたサルーはそこに横になり目を閉じ再び眠りにつく。

ここまでインドの貧困と子供の行方不明、そして一番驚かされた事は大人の無関心だ。
日本ならこんな事はありえないだろう。
子供が一人で泣いていたら誰か彼か声を掛け親を探したり警察に連れて行ったりするはずで困って泣いている子供を無視して放置するなど言語道断である。

それどころかサルーの様に迷子の子供だけではなく中国と同様にインドでも子供を攫われる件数が凄く多いそうだ。
人身売買、臓器売買が後を絶たないそうだ。
インドで学校帰りに親を待っている間に攫われそうになった子供の話をネットのニュースで読んだ事がある。
サルーや子供達が劇中で男達に追いかけられ幸いにもサルーは逃げ果せたが捕まり泣き叫ぶ子供達の声が耳を離れない。
恐ろしい現実。

線路を歩いていると優しそうな女性に声をかけられご飯を食べさせてもらいサルーにも笑顔が戻ったのも束の間その女が連れてきた見知らぬ男に連れて行かれそうとサルーの幼い心が危険を察知し隙を見て逃げ出す事が出来た。
これも人身売買?
こんな人ばかりなの?
インド人嘘つかないんじゃなかったの?

その後幸運にもサルーは魔の手から逃れ養子を望むオーストラリア人夫婦によって養子に貰われ大事に育てられ幸せに暮らしていたかの様だった。
でも良い子のサルーはインドの記憶を封印していた!
大人になったサルーは養母想いの優しい子そのままに育ったんだな。
でもそれでいいの?

ある日大学で知り合ったインド人の友人宅に招かれて飲み物のおかわりを貰いにキッチンへ行った時そこにはインドで兄に食べたいとせがんだ真っ赤な揚げ菓子があったのだ!
サルーは5歳の子供だった頃に戻ってゆく。
絶句。
兄とのやりとりを思い出す。
涙が溢れて頬を伝う。
忘れたふりをしていたけどまだインドの事は忘れてなどいなかった。
忘れる事など出来なかった。
こみ上げる想い。
やっぱり実母や兄に会いたい!

そこから先は養母に伝えずにサルーは当時の列車の速度を調べ計算して距離を割り出しインドの地図を広げgoogle earthで記憶を辿って故郷を探していく。
部屋には大きなインドの地図、調べた紙をボードに貼り付けベッドまでリビングに置いて昼夜を問わず徹底的に調べる事に没頭して行く。
サルーの神経は研ぎ澄まされささくれて愛する人、養父母、もう一人のインド人の血の繋がらない兄を傷付けて孤独が募って行く。

そこから先は劇場で是非!ヽ(´▽`)/


子役のサルー君、本当に名演技で可愛かった!(*^^*)
また声も本当に可愛くてサルー君のクリクリッとした目と笑顔がとても愛くるしかった。
小さい頃可哀想で観ていて辛かったけど小さいサルー君もっと観ていたかったなぁ。

養母を演じたニコール・キッドマン。
何故髪の毛チリチリなの?と思っていたが本当の養母の写真を見て似せてたんだと納得。
歳を取っても綺麗すぎてちょっとママのイメージあんまり湧かなかったのだけどサルーの兄を心配するあまり床に伏せって泣きながらサルーに打ち明けるシーンは涙を誘った。
この母も辛い幼少期があったんだ。
でも血の繋がらない兄の事をもう少し丁寧に描いて欲しかったかな。
今作でアカデミー賞助演女優賞取ってたんですね!
流石の演技でした。

ルーニー・マーラも素敵だった!
これは惚れますね!笑
「キャロル」の時より透明感が増していて綺麗になった気がしました。
サルーの養母にサルーが実母を探していると言うべきと強い口調で訴えかけていた彼女の演技は良かった。
サルーと通りを挟んで歩いている時の彼女の仕草だったり笑顔がもうパーフェクトでした!(*^^*)

アカデミー賞6部門ノミネートされていた今作。
個人的には作品賞は今作に取って欲しかった。
私は「ムーンライト」よりこっちの方が好きでした。
ご贔屓にしているこじんまりとした映画館でも後日上映すると聞いたのですが悩みましたが待てない!早く観たい!と今日の休みはシネコンでもいいから観たいと思って観に行ったらびっちり混んでいて両隣に男の人が座っていてなんだか息苦しかったです。
後ろの席で飲み物を隣の人に掛けたみたいで何度もごめんなさいが聞こえてきてガタガタ音がして座席が揺れたり集中できなかったです。
確か「ララランド」の時も咀嚼音やビニール袋をガサガサする音に悩まされた事を思い出しました。
やっぱりシネコン落ち着かなくて嫌いです。(´-ω-`)
でも映画はとても良かった!
観るべき映画でした。
ラストの曲とピアノの曲がとても良かった!

インドに行くと人生変わると聞くけれど私はやっぱり恐ろしくて行けないかもしれない。
泳いだり洗濯をしたり遺骨を流したりするインドの母なる川、ガンジス川。

昔大沢たかおが主演した沢木光太郎原作の「深夜特急」でインドのシーンを思い出す。
その時とほぼ変わらない様子で洗濯をしているシーン。
インドはいつから進化が止まっているのだろう。

子供は勉強しなさい!って日本人なら誰でも口にするこの言葉をインドでは使えないんですね。
子供が勉強をする事は当たり前じゃないんだ。
幸せなんだな日本人は。
今作を観て痛感しました。
インドの貧困層は子供であっても食べる為に家族の為に働くのが当たり前。
日本人は家族で思いやりに溢れ牛乳を分け合って飲んでいる貧しいインド人より生活は豊かだけど心は貧しいのかもしれない。

サルーの身の上に起こった事はとても可哀想で不幸な事だったけどこんな素敵な養父母に出会えて本当に良かったのでは?
この出会いはすごい確率だと思います。
この出会いがなければ今のサルーはなかったんだしgoogle earthを使って探そうとはならなかったはず。

ただ実の兄のその後の運命を知り涙が止まらなかった。
夢に何度も出てきた優しかったお兄ちゃん。
あの時戻ってサルーがいなくなってお兄ちゃんが必死に探している場面を想像しただけでも涙が溢れてくる。

観るべき素晴らしい映画でした。(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
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