チョマサ

山河ノスタルジアのチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

山河ノスタルジア(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画は、時間とか時代が透けて見えるのがよかったです。タオとジンシェンとリャンズーの三角関係の背景には、世紀末で外に出ようぜ、米ドルがいいよ、石炭は儲かんねえな、とかそのときの状況を絡めて描かれてます。2014年には炭鉱業の終わりを背景に、そして2025年にはドルよりもこれからは中華人民元の時代だよって今までと流れが変わってしまい、それまでイケイケだったジンシェンがつまづいて、全てがひっくり返るのがおもしろいです。

描いてることは小さい出来事なんですが、時間軸でいったら26年と奥行きのスケールは半端ないです。時間を感じさせるように作れてるのがおもしろさの基礎になってると思います。

パンフレットも読むと、実際に起きてる現状を反映させてるみたいで、ただ、あるあるをまとめただけって気もしなくもないです。

この映画を見て思い出したのが、福島聡の少年少女って漫画のなかの『自動車、天空に』っていう短編。つぎつぎ時間が流れていくのが気持ち良くて、この映画もそれに通ずる気持よさがあります。正直1999年の三角関係はつまらなくて寝そうになったんですが、タイトルが出て2014年に一気に飛んでからは面白くなりました。

あの三人がどうなったのか変化が出てからが本番に思います。リャンズーが体を壊して、前の炭鉱の同僚を尋ねる件りもいいです。タオを尋ねると、彼女は離婚していて、まああの夫じゃなって風に納得できるのが可笑しいです。

時代ごとの状況に何を無くしてどう変わっていくのかを見るのはおもしろいです。

ジャ・ジャンクー監督の映画はこれがはじめてですが、そんなに刺激的な場面があるわけでもないのに、見せてくれるなと思います。あんまり出てくる人間が喋らないのもいいし、絵で見せてくのが好感が持てます。時代ごとにスタンダード、ビスタサイズ、スコープサイズと変わるのもそうですが、画質と照明も変えてますよね。1999年はブラウン管みたいな画質だし、2025年は観光PRの動画みたいに影がくっきりできれいに撮ってます。

GO WESTの歌詞を調べたら外に行こうとか旅立とうといった言葉が出て来るんで、劇中の故郷を離れたりする若者や、新世紀を迎えるのにぴったりな曲で、当時も良く流れてたみたいです。

中華人民元の時代だよっていうのは、今の中国の強気な態度とか考慮してるんだろうか。バブルがはじけたのを皮肉ってるんだろうか。どっちでしょう。2025年のデバイスの予想図が透明で薄くなっているのはどういった根拠なんだろうなと思いました。
チョマサ

チョマサ