ゆうゆ

アンナと過ごした4日間のゆうゆのレビュー・感想・評価

アンナと過ごした4日間(2008年製作の映画)
4.4

好きな女性をただ覗いているだけでは
満足できなくなってしまったおじさんの
想いが暴走し 彼女の家で不法に同じ夜を
共有したドキドキの4日間。
穏やかなタイトルに反して描かれる内容は
純愛以上変態未満なおじさんの小さな恋の
物語。片思いを拗らせすぎた冴えない
おじさんの偏愛の記録

フリッツホンカさんのような怪しげな
雰囲気を漂わせ「ドアロック」のような
猟奇的な人物像を彷彿とさせながら
その中身はとても繊細で小さな器の持ち主。
大胆に忍び込んだ割にやることは
拍子抜けするほど微笑ましくて あれなら
放課後好きな女の子の縦笛をこっそり
咥えてる小学生の方がよっぽど悪どい
気がする

一見 完全な変態映画なのに この作品の
凄いところは これまでの悲惨な境遇を
垣間見せ彼の不器用な一面や孤独な
人生の片鱗を知ることで彼の心理に
いつの間にか寄り添い 彼女に対しての
純愛ともとれる素朴な奇行の数々に
嫌悪感よりも切なさを感じてしまうこと

彼らの間にはこの先も決して埋まることの
ないであろう忌まわしい因縁の過去が
あって彼女にとっては丸ごと消し去りたい
記憶であり 彼にとっては 彼女に傾倒する
要因となった鮮烈な思い出となっていた
ような そんな気がする

愛おしい人に触れれそうで触れられない
名前さえも気軽に呼べない臆病な男が
真っ直ぐに注いだ ひたむきで歪な
一方通行の愛
報われることのない悲しい片思いの
行く末がなんとも切なくて 思わず彼を
ぎゅっと暖めてあげたくなる

彼女を見つめる彼の背中には哀愁が漂い
その目はとてもやさしかった
ゆうゆ

ゆうゆ