ベイビー

みちていくのベイビーのレビュー・感想・評価

みちていく(2014年製作の映画)
3.5
彼氏に噛まれることでしか満たされない、陸上部エースの梅本みちる。

陸上部員に疎まれながら、部長の責任として、各部員のラップと練習内容を、毎日秘密のノートに書き記す新田舞。

二人は高校二年生。行きたい大学どころか、未だ自分が何者かも分からずに悩む17歳。

満たされない心を埋めたい日々。友達と遊んでも、カラオケで歌っても、一所懸命部活に励んでも、心の片隅に虚しさが残るばかりです…

"新月に願い事をすれば、満月の夜に願いが叶う"
みちるの姉が、みちるや舞に教えた言葉です。

確かにそこにあるのだけど、地球の陰に隠れ見えない新月。その新月は二人の空虚を表しているようにも思えます。満たされることのない空っぽな心。願う言葉も見つからないまま、時間だけが過ぎて行きます…

彼女らの空虚とは、"孤独"と少し違います。もちろん"暇"を持て余しているわけでもありません。たとえ誰かが側にいても、限りある青春という時間が秒針を揺らしても、ずっと心は置き去りのまま、何にもなれない自分に虚しさを感じているのです。

新田は部活のことを秘密のノートに書いていました。几帳面な性格や部長の責任感もあったでしょうが、それはそれで満たされていたのだと思います。

部活を辞め、何も書くこともなかった新田は、自分のことを書こうと、日記をつけようとします。しかし、いざ自分のことを書こうとしても、未だに自分が何者なのか分からない状態。しばらく日記は空白のページが続きます。

新田は自分のことを書くのを止め、他人のこと、特にみちるのこと書くようになり、書くことによって空虚でない自分を感じています。

全くの余談ですが、この新田を見ていて、僕も同じだと感じていました。

レビューを書き始めて半年。その間、繁忙期の忙しさ、部署の移動など、仕事でのストレスが僕の心を蝕んで来ましたが、好きな映画を観て、好き勝手にレビューを書いてくうちに、ストレスがうまく中和されたように思います。

好き勝手にと言いましたが、それでもやはり、読んでいただく方の顔(←分かんないので想像ですが…)を思い浮かべながら、一文字一文字言葉を置いていく時間は、心を満たすのに十分です。

そして、同じ映画を観て、色んな人が何を感じるのか、どう表現しているのかを、レビューを読んで知ることも、心を満たす要素になっています。

9月になりだした頃から少しずつ残業も増えはじめ、平日にレビューを書くのも難しくなってきました。

これからどんどん忙しくなっていきますが、自分の心を安定させるよう、やり場のないストレスの捌け口として、できるだけレビューを書けていけたらと思っています。
以上、余談。

今作は、全く無名の俳優さんばかりで、多少演技や間のぎこちなさを感じましたが、それでも思春期の少女たちの心情が丁寧に描かれていたと思います。

"みちていく…"

空っぽな心の時に観ると、何となく心が満たされた感じになる、とてもいい作品でした。
ベイビー

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