TOSHI

ロブスターのTOSHIのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
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独身者は逮捕され、45日以内にパートナーを見つけなければ、動物に変えられてしまうというとんでもないテーマ設定だが、現代の晩婚・未婚化社会では、こんな映画が登場する必然があるのかも知れない。ランティモス監督は「籠の中の乙女」で、家族を誰にも壊されたくない父親が、厳格なルールにより娘達を外界から隔離するという異常な世界を描いたが、本作も厳格なルールにより形成される異常な世界が描かれている。エグい設定に対して、室内楽のBGMや品格のある映像に驚くが、そのようなタッチで静かに物語が進行する事で、登場人物達のブラックさが浮き彫りになっている。パートナーを見つけなければいけないホテルでの狂気から逃げ出し合流する、森に隠れ住む独身者達のコミュニティーは恋愛禁止で、そこの女性と恋に落ちてしまうというストーリーがアイロニカルで唸った。特に、コミュニティーのリーダー、レア・セデゥ(アデル、ブルーは熱い色)の、冷徹な演技が良かった。後半、当初の設定があまり意味がなくなっていくのは、やや残念だ。シュールさやブラックさに乗れない人達の、批判的なレビューも多いようだが、人間的理性と本能的情愛をシニカルに描いた野心作として、私は評価したい。
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