ピト

ちはやふる 上の句のピトのレビュー・感想・評価

ちはやふる 上の句(2016年製作の映画)
3.7
【人の言い間違えって指摘できますか?】

相手が目上の人や、あまり親しくない場合は非常に言いづらいものです。

先日行きつけのサイゼリヤにて、友人と二人でいつもの様に、此の国の明日について話し合っておりました。

ちょうど佐々木希のワイヤレスブラのCMの是非で議題が膠着したところで、何処からともなく気になるワードが耳に飛び込んで来ました。


「広瀬すず…ちはやふる…上野…千葉…」


斜向かいのテーブル席には女性の二人組が座っており、どうやらそちらからの会話のようでした。

と言うのも賑わっている店内とは裏腹に、喫煙スペースには我々と彼女達しか居らず、こちらが黙っていれば、聞き耳を立てずとも会話の内容が理解できるような環境でした。

わたしは何かおもしろの予感を察知し、聴覚のチャンネルを瞬時に切り替え、二人組の会話に耳を傾けました。


どうやら女性二人組は先輩後輩のようで、
『ちはやふる』を観た先輩が、後輩に対して熱弁を奮っており、それが次第にヒートアップしてきたご様子。

わたしもフィルマークスを始める前に『ちはやふる』は観賞済みでした。
しかもかなり面白かったので、いずれTV放映されるだろうし再度観てからレビューしようなんて思ってたので、当然先輩が熱くなる気持ちも分かります。


「とにかくみーんなキラキラしてんのよ!」
「〇〇ちゃんも絶対観て!上野…でいいから!」
「広瀬すずがカワイすぎて死にたい」
「真剣佑知らないの⁈ 千葉真一の息子だよ⁈」
「ツクエくんマジヤバイから!」
「 え、千葉真一知らない……⁉︎」
「青春がまぶしすぎて死にたい」
「じゃあ野際陽子は……⁈ 知らない⁈」


などと緩急織り交ぜながらのトークが一方的に続いており後輩ちゃんとの温度差は増すばかり。

とは言え会話自体がとかく面白い訳でもなく、
そろそろお耳のチャンネルを切り替えて、日本の未来についてディスカッションを始めるかと考えるものの……

でも何かが引っかかる……

なんだこの感じは……

なにか大切な事を見落としてはいないか……


「上野区がめっちゃいいんだから〜!」

「〇〇ちゃん上野区だけでも観て!絶対泣くよ!」

「上野区がさぁ…」

まさか……

そうか……そうだったのか……


てっきり上野でリバイバル上映でもしてるのかと思っていたのだが、違う!

この先輩『ちはやふる 上の句(かみのく)』を
『ちはやふる 上の句(うえのく)』って思い込んでる!
思い込んでるーー!!!ドーン!!!

つーかそもそも上野区なんて無かったし!
上野は台東区やで!


そして恐らく後輩ちゃんはその事実にかなり前から気付いている。
さらに我々の耳にも会話が届いている事も感づいているだろう。

事実、後輩ちゃんは途中からこちらを気にする様になり、わたしとも何度か目が合いその度バツが悪そうに目線をそらしている。
正直先輩の話しなんかほとんど頭に入ってないに違いない。


この状況下においてこちらの関心はただ一点、
「後輩ちゃんはこの言い間違えを指摘できるのか」
その一点に他ならない。



今の状況を簡単にまとめると、以下の通りである。

先輩「ちはやふる うえのくサイコーやん!!」

後輩「先輩の熱量ハンパないし指摘しづらい…でもあっちのテーブルにも絶対聞こえてる…恥ずい…どないしよ…」

私 「こっちは面白くなれば何だっていいんや。後輩ちゃんに聞こえてるアピールして更にプレッシャーかけよか」

友人「佐々木希はカワイイ」


これがネタや良く出来た話ならば、この後あっと驚くオチになるのだが、実際はそうも行かない。

その後突然、星野源の話題に移ってしまいあっけなく終わりを迎えた。

会話の流れ上どこに星野源への分岐点があったのか、わたしには全く分からなかったが、ともかく先輩は星野源へと急ハンドルを切った。

その時の後輩ちゃんの安堵の表情がまるでツクエくんにダブって見えた気がしたが…おそらく気のせいだろう。


そして我々も佐々木希の性的魅力の有無とその事象について語り合うべく定例会議を再開したのだった。



【あなたは人の言い間違えを指摘できますか?】

ちなみにわたしは間違いワードが三回出てきたら三回目に指摘します。(二回まではスルーです)


みなさんのご意見を我々『此の国の明日を考える会』サイゼリヤ支部までお聞かせください。
ピト

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